146回原宿句会
平成13年8月
兼題 炎昼 虫干 蟻地獄
席題 雷
遠雷や湯治の母のゐるあたり
炎昼や空気のねばる大手町
虫干しや袖に覚えの継の跡
あかあかとひとすぢの川青田風
校倉の書庫を囲みて蟻地獄
美穂子
炎帝に腰ずつしりと裸婦の像
短夜や夢の出口を探しかね
溜息を漏せば飲まれ蟻地獄
コーヒーの香の濃く淀み雷兆す
ルビ褪せし変体仮名や書を曝す
千恵子
一語づつ読む古文書や日雷
押し花の色ぬけてゐる曝書かな
炎昼や赤子大泣き茹で上がる
蟻地獄耳そばだてて覗き込む
明日咲く朝顔蕾月へ向く
翠月
炎天やサラダ多めの山料理
退きの知恵に生き抜き蟻地獄
曝す書の思ひ出滲む印あと
一瞬に浮ぶ夜景やはたた紙
着こなしはベルトゆるめの夏衣
虫干や子の読み急ぐ課題図書
炎昼や勝利の女神定らず
遠雷に佳境で終はるゲームかな
豹柄の弾むジェンカや夏祭
活断層物ともせずに蟻地獄
利孟
雷鳴や空半分の明るくて
魂の五分持て余し蟻地獄
連載の一冊欠けて曝書かな
逆茂木で囲はる遺跡灼けつのる
炎昼や正時に電波時計遊ぶ
白美
遠雷や椅子を取込むカフェテラス
二枚目も相貌崩れ夏芝居
贋作の話も共に曝書かな
貴種流離説話の寺の蟻地獄
置き去りの風鈴一夜鳴り止まず
和博
一粒の砂も動かず蟻地獄
幽霊図の供養を兼ねて土用干し
炎昼や水面に波も音も無し
雨強雷に力を得し如く
雨かとも見紛ふばかり黒日傘
改革にみんな魅せられ蟻地獄
炎昼や腹を背にして眠る犬
信長の勘気は烈し日雷
激辛のカレーを口に大暑かな
青春の手垢の残る書を曝す
筝円
生くるさま見せて曝書の部屋鎮む
放心を装ふ執心蟻地獄
落雷に家中の刻点滅す
冷奴ロボットの指不思議かな
この空はもの思ふ碧秋立ちぬ
古川明
蟻地獄あがけば空のなほ遠く
炎帝に打ちのめされて身はゆらぎ
いかづちの闇夜を差着て家近し
戦跡に色蘇り仏桑花
虫干や五三の桐の紋すきて
福四六
虫干や背広五枚の核家族
夢のなきバブル経済蟻地獄
炎天下汗も涙も当選す
小渕亡き官邸の杉落雷す
今回は、新しい方が参加、福四六さんです
正会員資格は無さそうですが、余り無理をなさらずに御精吟を
ダントツの美穂子さんでしたが、
伝統の巻頭詠者が兼題を撰ぶことをされませんでした
原宿句会はそれではやって行けない句会です
次回九月は三日、例会場にて
兼題は 秋野 萩 二百十日