149回原宿句会
平成13年11月5日
朝寒やひとりのときは背を丸め
目に慣れし炭疽の疽の字冬に入る
蘆を刈る四方より中へ渦ゑがき
桜田門かこむユリノキ黄葉かな
ラマダンの無き島国へ鮭帰る
千恵子
片足を病む鳩のゐて暮の秋
封緘に手描きの猫や薄紅葉
鮭帰る川波馬の耳に似て
朝寒や追ひ越してゆくランドセル
湖よりの風を導き葦を刈る
希覯子
トラックの轍数条芦を刈る
蝦夷勤め鮭の戻りも三度かな
三滝の一滝濃かる紅葉かな
朝寒やバスの排気が足攫ふ
埋め戻す秩父古墳や末枯るる
筝円
朝寒や時空世界にひとり覚む
川の名に校歌の記憶鮭帰る
芦刈の谷地をなぞりて風まはる
小六月位牌と祝ふ誕生日
桜紅葉ゆつくり停まる福祉バス
芦刈るや烏は風に流されて
戸袋に入り込む光朝寒し
紅葉狩りことに明るき枝選りて
蓮根掘り黄泉へ泥水噴き入れて
出逢ひあることの確信鮭還る
白美
秋時雨鯉の頭の赤模様
芦刈や瞼煤けし観音像
千年のいのちの柱黄葉して
目礼で返す挨拶朝寒し
いづれ兄どれが弟鮭帰る
武甲
デジカメの母の便りや雪迎へ
蘆刈や地底を探る震源車
即売の幟立つ村鮭帰る
朝寒や声勇み立つ豆剣士
総立ちで送るフィナーレ黄葉寒
翠月
落つる日に蘆刈る人の小さきかな
大根の間引きや辛み香りける
透過光ざわめく色の紅葉狩
鮭帰る波に活気の番屋かな
朝寒や小学生の半ズボン
鮭還る水の匂ひに誘はれて
砂掻きて鯉寄ってくる秋の川
池一面紅葉がつくる世界地図
蘆刈りや朽舟半身顕はるる
朝寒や秘湯の宿の鹿威し
正
故里の水の匂ひや鮭帰る
朝寒やふらりと入る珈琲屋
街角の輪車に客呼ぶ梨売女
暮れなづむ湖北にひとり芦刈女
園遊会十六葉の菊薫る
明
鎌音の渡りし岸や芦刈りぬ
星流る幾億年の旅を終へ
めらめらと燃える紅葉や小倉山
涯しなき旅路辿りて鮭もどる
朝寒や靴音早め通学路