第27回原宿句会
平成4年9月22日

   
兼題 十三夜 牛蒡(掘る) 鈴虫 席題 運動会


            東 人
不器量のなかのあしなが牛蒡かな
運動会消えたる国の旗つらね
人に蹤き路地ぬけてゆく後の月
鈴虫の社宅に嬰の増えにけり

            利 孟
賞の字の刷られしノート運動会
十三夜明りを覆ふ操舵室
茣蓙に置くステレオラヂオ牛蒡掘る
鈴虫や警手の揺らす合図灯

            白 美
鈴虫や卓にひろがる冷え御膳
牛蒡引く関東ロームの赤き土
湯加減を足でぬるめて十三夜
騎馬戦の鉢巻とばす運動会

            美 子
痩せ牛蒡戯れに引く捨て畑
三井寺も石山寺も十三夜
鈴虫の鳴き声踏んでしまひけり


            希 覯 子
階上階下に照る照る坊主運動会
霧吹いて鈴虫の鳴き誘ひけり
牛蒡引く夫唱婦随をそのままに
麻雀の誘ひもありて十三夜

            内 人
北富士や号砲耳に牛蒡掘る
運動会ソ連の旗を探しけり
鈴虫や共食ひの足残る篭
十三夜解ける帯のささめごと

            外 人
運動会横見て走る一年生
コース沿ひカメラも走る運動会
源平の池の水面の十三夜
藤棚のすず虫の声数いくつ

            英 樹
笹掻きの水に真白き牛蒡かな
日々に減る篭の鈴虫高鳴けり
女教師の声が華やぐ運動会
泣き真似の娘の肩を抱く十三夜

            瑞 夫(岩佐)
十三夜ふと一葉が偲ばれる
病癒えぬ妻と語らふ十三夜
詫びごころボトルに託す月句会
秋の夜のボトルをなかの句会かな

            千 恵 子
鈴虫や家うち寝息に満たされて
十三夜女やさしき眉持てり
確かなる腰もて女牛蒡引く
運動会果てたる庭に犬の佇つ

            健 次
組みし腕ぬくもり伝はる十三夜
児童より多く親あり運動会
地下駅の風物となり鈴虫も
ごぼう引く皺を刻みし顔の汗

            武 甲
新妻のマニキュア眩し十三夜
我が子撮るビデオの走る運動会
偏差値に一喜一憂十三夜
鈴虫や靴音乾く家路かな

            千 尋
鳴き納むすずむしの闇ほの白き
朝風に耳そばだてて運動会
ハイウェイを並んで飛ばす十三夜
す巻きにし新聞紙ごと土牛蒡