第26回原宿句会
平成4年8月21日

   
兼題 鯊 秋茄子 爽やか
席題 夜食


            東 人
漬梅をかりかりと噛む夜食かな
弟子捨てて俳誌終刊秋茄子
掌に受けて鯊の甘露煮熱きまま
爽やかやガッツポーズの細き腕

            千 恵 子
夜食とる工事現場の国訛り
秋茄子や鉄漿もいる写真帖
婚告ぐる便り爽やか楷書体
遠見れば小舟ばかりの沙魚の秋

            英 樹
ちぎり絵の屑膝にある夜食かな
秋茄子の土のほてりに輝けり
爽やかに鐘打つ僧の飛び上がる
鯊釣りや最終便の船が来て

            希 覯 子
爽やかに岩崎恭子笑みにけり
爽やかやドレミファ橋を跳び渡る
秋茄子や支柱の竹に牡蛎の殻
毎日が日曜となり沙魚を釣る

            白 美
秋茄子やさふらふと結ふ祖父の文
天婦羅油撥ねどよめきの沙魚の舟
夜食待つ時の余りて葉書書く
背鰭張る沙魚の命や釣りの糸

            美 子
帆に受けし風直角に爽やかに
はたはたと国旗鯊釣日和なり
鯊釣りの父童顔になり帰る
客ありて三日秋茄子採り忘れ

            重 孝
釣り人に上目遣ひの魚篭の沙魚
爽やかに楕円飛翔のグライダー
やるまいぞ厨廚の篭の秋茄子
チャルメラの音近付きて又夜食

            千 尋
逆立ちになり大空の爽やかに
一畝の畑にぎはして秋茄子
モグモグと口だけ動く夜食かな
言付けにくるみし沙魚の五尾十尾

            利 孟
書き込みの増える楽譜や夜食摂る
秋茄子をもぐ手に皮のきしみかな
鈴仕込む金のスカラべ爽やかに
沢庵の飯に染む色沙魚日和

            京 子
糠床の夢より醒めて秋茄子
颯々と風をまとひしさわやかさ
紺の色かくも艶なり秋茄子

            玄 髪
爽涼や痩せ馬が行くおらが村
ベランダの俄かづくりの秋茄子
昼下がりぶらり本牧沙魚日和
冷蔵庫の奥まで探る夜食かな

            香 里
さわやかにテニスボールの返す音
秋茄子を塩もみする手染まりけり
さやけくてビルから望める東京湾

            明 義
さわやかや磯皓々と浜の月
秋茄子の肌照り映えて網の上
さわやかや雲足早に月が冴え
さわやかに網戸を越えて夕の風