兼題 短日 酉の市 返り花 席題 都鳥 |
東 人 短日や終値赤き電光板 葛飾を削る川波百合鴎 ばら売りの面子海贏独楽年の市 警棒の頭触れゆく返り花 千 尋 短日や舞台稽古の声とほる 図書室の窓にかかるや返り花 狛犬に預けられし子年の市 プカプカとも目を合はさぬ都鳥 美 子 蔵のある家壊されて返り花 算盤と刃物の街に年の市 ネル足袋に福助の顔歳の市 電柱に箒すっくと暮易し 白 美 都鳥幼き衛士の大欠伸 交差する一本〆や酉の市 短日や答案用紙白きまま 芸人の墓の裏側返り花 健 次 去年よりも熊手小さし酉の市 乱れたる大地の呼吸か狂ひ花 桟橋にゆりかもめ群れ出航す 短日や麓に降りる道昏し |
武 甲 貴、りえの似顔絵並ぶ酉の市 短日や鎚の音忙しニュータウン 喧噪の去りて水辺の返り花 ゆりかもめ歌詠み集ふ二重橋 千 恵 子 返り咲くタンポポに涙みられたり 酉の市抜ければ暗き街に入る 短日の足裏に畳のぬくみかな 都鳥迷子泣いて橋昏れる 利 孟 泥を吐く浚渫船やゆりかもめ 短日やフロント嬢の赤ジャケツ 帰り花舞ひたる鬼の婆沙羅髪 千両の張子の箱や熊手市 京 子 おろしやの現在を問ひたや都鳥 義景の湯殿のあたり返り花 短日や俗名のまま稚児の墓 それぞれの夫婦模様や酉の市 内 人 短日や鉄棒の子の影長し 返り花童背負ひて百度踏む 酉の市手締めて笑ふおかめかな 返り花綱の欠けたる触れ太鼓 |
希 覯 子 酉の市ついで詣りに鬼子母神 短日やエレベーターに配膳車 迷ひ来しか皇居のお濠都鳥 都電道枕木垣に返り花 香 里 街灯を独り占めする返り花 短日やパジャマ姿の長電話 短日や残り少なきカレンダー 言問や水掻き紅き都鳥 重 孝 年の市半月だけの賑やかさ 短日やハンザマストに刻を知る 返り花愛しき人に会ひたくて スワローズ右に左に都鳥 英 樹 短日やアトリエの灯のはや点り |