兼題 著莪 出水 夜釣り 席題 鱧 |
東 人 火袋に散らばる小銭著莪の花 土嚢より泥の溶けゆく出水かな 鼻といふ岩に寝待ちの夜釣かな さばかれし身を眺めゐる鱧の貌 利 孟 引綱の赤き太房や著莪の花 田に走る魚の背鰭や出水引く 風になる鈴を聞き分け夜釣りかな 鱧くねり己が尾の位置定まれり 千 恵 子 闇に立つ人声高し梅雨出水 骨切りの刃音一徹鱧漁師 帯ゆるく締めたる母や著莪開く 夜釣人闇に釣果を聞き合へり 千 尋 夜釣来てとはず語りや河童渕 鱧棲むや海越ゆ橋のこのあたり 慶應の出水刻める黒柱 梅雨出水半鐘音のくぐもれり 武 甲 梅雨出水警戒水位に父走る 夜釣人飲み友達を連れ帰る 去り難き浪速の一夜鱧料理 夜釣火や沖に筋なす波浮港 |
美 子 一隅にして一面著莪の花 鈴の音に急ぐ気配もなき夜釣 花寄せの広口の篭著莪の花 水流の太きを束ねゆく出水 白 美 水の字の瓦も泥に梅雨出水 御佛に縁の篤し切られ鱧 とと待つと寝はぐれる児や夜釣船 著莪の咲く直ることなき人の家 詩 乃(清原) 夜釣舟軋みて人語途絶えけり あたたかき闇に母恋ふ夜釣かな 著莪咲けり母の好みし花知らず 青き魚夜釣の糸に吸まれ跳ぬ 健 次 土手原に自転車寝かす夜釣かな 終電後橋より望む夜釣の灯 ブランコをこぐ足下に著莪の花 足下のぬかるみなくして出水増え 重 孝 墨の香に便りを載せて著莪の花 にぎり飯腰にくくりて夜釣かな 白無垢の衣装まとひて膳の鱧 島原をいかにせんかとまた出水 |
英 樹 著莪の花水車のしぶき浴びにけり 舞台の跳ね旅芸人の夜釣かな 庭先に家鴨の泳ぐ出水かな 大阪で修行を終へて鱧料理 梅 艸 足下の闇せり上がる夜釣かな 押し花の紫うすし著莪一輪 食堂車で出水の村を過ぎにけり 緑陰の底なる著莪や午後三時 希 覯 子 八丈の磯知りつくす夜釣りかな 淡路島民宿によき鱧料理 傾斜地にさからひ著莪の真直ぐに 出水あとドレミファ橋は芥ため 京 子 千切られし紅緒残して出水引く 波止の影程よく離れ夜釣りかな 梅雨出水蝋燭で読む古新聞 若の花快進撃す鱧落し |