第37回原宿句会
平成5年4月26日

   
兼題 筍 五月 蜂
席題 母の日


            東 人
筍の巻きゆるめつつ伸びにけり
尾を舐めてより巣離れの今年蜂
筍の節の斜切り輪切りかな
みせかけのカリキュラム組み五月かな

            英 樹
聖五月青の時代のピカソの絵
蜂の巣や百葉箱の朽ちし屋根
母の日や津和野で買ひし綴り和紙
たかんなや保父の脚から離れぬ子

            白 美
ゆらりとも搖れぬ花より蜂飛びぬ
竹の子や土ほくほくとやはらげり
母の日に縫目の荒きぬひぐるみ
大かばん肩に駆けゆく五月かな

            京 子
母の日の「おてつだい券」空手形
早苗月風向計も鯉の形
重ね着を脱げばたかんなつややかに
筍や手にしっとりと地の温み

            千 恵 子
一雨に洗はれ五月どうと来る
閉じ込めし蜂に物言ふ留守居妻
乾きやすきたかんなの泥村の昼
母の日は縁なきものよ石冷える

            美 子
筍を買ふ高層の地下売場
ほこほこと山丸くなる聖五月
熊ン蜂背に隙見せず塀を噛む
母叱るとき五月雨の音強し

            希 覯 子
トラックは秋田ナンバー蜂の箱
母の日や風樹の嘆をまた重ね
風薫る団地公園研師の座
筍や大地を割りし汗湿り

            梅 艸
筍の大地を吸うて灰汁ほのか
雲梯にふと蜂の来て散る子かな
筍は歯茎の至福厚く煮る
春愁や名曲喫茶の砂糖壺

            利 孟
巣分かれの蜂の房よりこぼれけり
たかんなの土より得たる甘さかな
接吻の痕の光や聖母月
母の日や出馬表明せる官吏

            健 次
庭先に蜂飛びし家取り壊し
竹の子や社やしろに頭を踏まれ
灯を消して神輿繰り出す五月かな

            玄 髪
母の日や相談相手の薄財布
退官の閑極まれりはや五月
筍の灰汁抜く鍋の煤の痕
蜂を鑑る光の中の子供達

            香 里
母の日に形歪んだハンバーグ
筍や料理の手順母に聞き
ネクタイも板につきたる五月かな
筍や爪の中の泥とれず

            千 里
蒼蒼と畝傍の山の五月空
円描き角にも曲がる蜂の翔
竹の子の一節ごとの皮の濃さ
さつき空托鉢の鉢円きこと

            千 尋
窓越しの空半分に五月かな
筍にせかれ早起き続けけり
縁側の節目動きて蜂歩く