兼題 冬霞 薬喰 笹鳴 席題 漱石忌 |
東 人 笹鳴や鎮守の森の破れ幟 名作の朗読テープ漱石忌 街路樹のはやりすたれや冬霞 民宿の振り子時計や薬喰 千 里 水満ちて紀の川ゆると冬霞 カウベルの音天上に冬霞 鼈甲の櫛に日落ちぬ漱石忌 根津の坂人影長し漱石忌 利 孟 笹鳴や皮散りやすきクロワサン ハチ公にキャラメルひとつ冬霞 スコーンに蜜たっぷりと漱石忌 薬喰肩納まらぬ女傘 香 里 薬喰隣座敷の賑やかに 全集を読み始めをり漱石忌 薬喰周り見渡し箸をつく 漱石忌栞半分に留まりて |
明 義 薬喰暖簾に威張る幟旗 濁水の陽に照り返る冬霞 冬霞富士山占めし車窓かな 薬喰葱の柔さに好み知る 白 美 紅茶缶コインで開けて漱石忌 肉喰へと児に急かせをり薬喰 冬霞飲みたき人の皆逝きて 笹鳴やそぼろ卵を炒りし朝 千 尋 踏み固む土の黒さや漱石忌 冬霞まつ毛にたまる日の軽し にんまりと笑む顔・顔や薬喰 鉢の木の胸まで伸びて笹子鳴く 美 子 骨盤をどつかと据ゑて薬ぐひ 笹子鳴く大湖も山も従へて 高啼きをせぬ鳩のゐる冬がすみ ささなきや茶席に上と下のあり |
千 恵 子 境内に古書展ありて漱石忌 動くやう動かぬやうに冬霞 笹鳴きや妻のエプロンいつも白 薬喰ふ宿に猟師の宴かな 英 樹 山積みの復刻本や漱石忌 冬霞大樹の枝の忘れ傘 笹鳴やまつすぐ進む霊柩車 腹満ちてなほも煮え立つ薬喰 法 弘 いつになく母のわがまま笹子鳴く 山風の日に日に荒し薬喰 女待たせ山門に入る漱石忌 舟屋より漕ぎ出す小舟冬霞 玄 髪 手づくり浮ぴくりともせず冬霞 釣糸を垂らす北浦冬霞 研ぎ込みし出刃の手捌き櫻鍋 妻怒り重曹飲む夜漱石忌 |
京 子 篠山の風の鳴る夜薬喰 笹鳴きや伊勢遷宮の祝い唄 明け烏一声高く漱石忌 冬霞隼人の国の山やさし 浄 名刺手に箸休みつつ薬喰ひ 笹鳴きや干し物固く冴え返る 冬霞雀飛び立つ刈れ田かな 願書とり学校めぐりや漱石忌 |