第46回原宿句会
平成5年11月 9日

   
兼題 雁渡し 牡蛎 寒昴
席題 枯蓮


            東 人
席めぐる津軽三味線牡蛎の宿
海からの風哭きやまず寒昴
温泉に林檎を浮かべ寒昴
飛来地に渡す木の橋雁渡し

            玄 髪
自販機のコインの響き寒昴
枯蓮田風吹くままに影踊る
牡蛎酢食み烏森口千鳥足
雁渡し半音高く獅子脅し

            利 孟
糊固きシェフの袖口牡蛎の皿
雄雌の違はぬ家鴨蓮枯るる
にじむ星ばかりを集め寒昴
太鼓から起こる出囃子雁渡し

            希 覯 子
牡蛎料理自ら任ず鍋奉行
寒昴一夜の宿を流人島
雁渡し塵芥の袋も蝶結び
枯蓮不忍の池廣きかな

            英 樹
投げ銭をギターケースに枯蓮
糠床に辛きもの足し雁渡し
寒昴トランペットの二重奏
牡蛎啜る投了の碁の女棋士

            法 弘
牡蛎打つや西へ潮引く燧灘
てのひらに零す錠剤寒昴
くれぎはのみな声を出し枯蓮
涙痕の上刷く化粧雁渡し

            白 美
肥後守握りて牡蛎を採る児かな
雁渡し駅の蕎麦屋の藍暖簾
枯蓮にライトアップの薄明り
寒昴緯線経線測りをり

            千 恵 子
牡蛎啜る故郷の海も暮れたるか
枯蓮田夕陽あかあか透けにけり
医者嫌ひ薬嫌ひや雁渡し
手話交わす人等の影や寒昴

            梅 艸
氷温の牡蛎胃の腑へと落ちにけり
夕浜辺風切り一つ雁渡る
みょうに音透き通る夜の寒昴
寒昴亡き父の父ありしころ

            京 子
信濃路の山どっしりと雁渡し
生牡蛎にきらきら光るレモン汁
刀折れ矢も尽きたるか枯蓮
雁渡し人無き里の官幣社

            千 尋
寒すばる神話伝説海潮音
牡蛎シャブリRの月の雅かな