第49回原宿句会
平成6年1月20日

   
兼題 鮟鱇 霧氷 ラグビー
席題 大寒


            東 人
孵し合ふごとく球出しラガーメン
鮟鱇の腑分けの出刃を逆手かな
大寒や碑文に痩せし北魏の書
甲斐の風武蔵の水の霧氷かな

            利 孟
大寒や墨の艶増す護符版木
得点のボール置き去るラガーかな
鮟鱇鍋帳場の壁のファクシミリ
雲の来て霧氷の種を蒔きにけり

            千 恵 子
円陣のラガー獣の如く吠え
大寒や爪切る音のよく響き
吊るされて鮟鱇ますます不器量に
月光に霧氷蒼めく川辺かな

            千 里
朝日吸ひふくらみ落つる霧氷かな
空の色映して咲けり霧氷林
鮟鱇の吊るされ凍てし大目玉
ラガー等の去りしグランド白き線

            白 美
首筋に風の錐もむ霧氷かな
ラガー等に八頭身は見当たらず
大寒や癇強き子の投げし独楽
鮟鱇の肝は別との肝嫌ひ

            美 子
仰向けの鮟鱇の腹競り落とす
天と地にラグビーの球突き立てる
一村の音閉じ込めて樹氷群
吊るされし鮟鱇の貌強かに

            英 樹
例会は鮟鱇鍋と決まりけり
日当たりて金の襖の霧氷林
ラグビーの薬缶の水に立ち上がる
ラガー等の互ひのシャツを交換す

            法 弘
大寒や留守番電話が吐く罵声
樹氷林に日矢の撩乱かぎりなし
鮟鱇の顎ばかりが残さるる
ラグビー見る新宿二丁目の酒場

            玄 髪
大寒や思ひもかけぬ訃報着く
月遅れニュース9に霧氷咲く
鮟鱇の鍋遠ざかる不況かな
ラガー等に我子夢見し多摩川原

            明 義
鮟鱇鍋グツグツ煮えて足くづす
ラグビーや骨軋ませて息荒し
大寒や被告の友がうなだれて
軒下に鮟鱇鍋の墨書跡

            希 覯 子
民宿の主人は漁師綬魚料理
ラガー観る青春遠く去りにけり
大寒や放置クレーンの赤ランプ
霧氷観る旅の誘ひの電話来る

            梅 艸
その前に笛ラガーなお疾駆せり
鮟鱇や無名の夜の鍋の底
鮟鱇をさばく合羽の腰回り
白骨の手踊りもあり樹氷林

            浄
駆り出され喪服襟立て鮟鱇鍋
藤一と寺一の活躍遥かラグビー場
息切れて大の字に寝る樹氷林

            香 里
ラグビーの歓声響く絵画館
大寒や電車の中で汗をふく
ラグビーの券と席番合はせ見る
鮟鱇の肝で一杯舌鼓

           武 甲
ラグビーの悲喜こもごもにノーサイド
鮟鱇を吊るす老舗の句会かな
林間に宝石散らす霧氷かな