兼題 月 桔梗 案山子 席題 子規忌 |
東 人 傘差して腕に拳のなき案山子 名月や駅の櫓の竹梯子 一足のわらぢも履けず獺祭忌 桔梗や苑の迷路の誘ひ道 美 子 案山子立て薬罐の蓋で水を飲む 桔梗やきつぱり裂けし野の気性 厠にて健在なりし子規の忌も 風止みし湖上にヨット望の月 英 樹 筆先に残るくれなゐ獺祭忌 振り向かぬ案山子の肩を叩きけり 伏して咲く桔梗に雨のしとどなり 羽二重の団子さかなに子規忌かな 利 孟 案山子祭金の襷の村長賞 糸瓜忌やラベル手書きの燐寸箱 肩を組む夫婦案山子の竹の腕 桔梗や莢にすき間の登り窯 |
千 恵 子 子規の忌や親子二代の古書商 名月を言ひ添へて切る長電話 夜来の雨溜めて重たき桔梗かな 故郷は墓あるのみや遠案山子 法 弘 名月や車庫に引き込む回送車 子規の忌の月明に踏む己が影 竹垣に立てかけられてゐる案山子 桔梗にしやがむは司葉子なり 希 覯 子 案山子日や畦にロボット巡査立ち 掛暦めくれば桔梗一茶の句 糸瓜忌や聖書持つ娘に寺を聞く イチローの二百安打や月今宵 梅 艸 両肩を尖らせ金波に案山子立つ もへの字に孤愁もあつて案山子かな 我が忌日ふと思ひみる子規忌かな 食卓に桔梗ある日の黒ビール |
白 美 譲られし文机の疵桔梗濃し 臥したれば四角き空に望の月 すこやかなひと少し妬む子規忌かな 巾着田田毎に案山子立ちてをり 萩 宏 画面にてはじめて知れる良夜かな 空気澄み案山子も一息つきにけり 一本の桔梗咲いて隣留守 糸瓜忌や思い新たに句に浸り 京 子 縄締めて胸の豊かな案山子かな 破れ屋に愛でられて咲く濃きききょう 熱の子をあやして明かす獺祭忌 浄 桔梗や裾野に轟く砲の音 案山子より烏が恐き雀かな 子規の忌や熱帯夜が明けにけり 千 尋 円月殺法 十六夜の月を吸ひこむ邪剣かな |