第67回原宿句会
平成7年3月24日

   
兼題 四月馬鹿 ヒヤシンス 春昼
席題 囀り


            東 人
路地裏はいつも日の底ヒアシンス
囀の輪の端に坐し吹かれけり
頂きものいずれも酢漬け万愚節
春昼や子は親よりも律儀にて

            千 里
春昼や二つ耳浮く河馬の池
飯盒のふつくら飯に百千鳥
うらやまし姉さん女房四月馬鹿
切らんとす髪も思ひも四月馬鹿

            法 弘
春の昼軒すれすれをゆく都電
囀りや庭先に伏す石の臼
子の影の頭でっかちヒヤシンス
死にたいと言へば死のうと四月馬鹿

            京 子
眠る嬰の手足のくびれ春の昼
春昼やジャズを低めの美容院
万愚節五分遅れの花時計
気まぐれに子の埋けをきしヒヤシンス

            白 美
囀りや地上に繋ぐ熱気球
ヒヤシンス窓に象飛ぶ歯科医院
四月馬鹿積み上げている超高層
春昼や胸よりはずす検査管

            英 樹
万愚節風呂屋に水中眼鏡の子
春昼や傾き癖の掛け時計
ヒヤシンス夜に屋根を打つ通り雨
春昼や玻璃の震へし銃砲店

            美 子
春昼や煮烏賊の目玉噛み損ず
囀りや選ばれし木の沈黙す
体形はアジア原産ヒアシンス
嘘を吐く体力萎えし万愚節

            千 恵 子
春昼や瞼重たき佛達
掌の中に篭の鳥入れ万愚節
囀りや鳥語を聞くといふ話
間も色も程よく並びヒヤシンス

            希 覯 子
側室の墓荒るるまま百千鳥
春昼やシルバーパスの客多し
栄轉や左遷の辞令四月馬鹿
玻璃鉢は水垢曇りヒヤシンス

            杜 子
棒読みの昇進辞令万愚節
囀りの寄す前方に後円に
「はつ恋」のちぎれしページ風信子
うたた寝の口の乾きや春の昼

            利 孟
止めてまた鳴り出す時計万愚節
剃り残し探る指先ヒアシンス
春昼の風に乾かすショートボブ
囀りや駆けて降り立つヘリコプター

            武 甲
南窓の主顔してヒアシンス
朗々とけいこ三味線春の昼
四月馬鹿匠より「天」を貰ひけり

            梅 艸
嘘一つつくでもなくて四月馬鹿

            萩 宏
万愚節幼馴染を思ひけり

            伸 作
白い髭ガラスが似合ふヒアシンス
春の昼地図になき畦影を追ふ
赤と黒童囀るランドセル
四月バカ女房だますも無視をされ