森利孟帰京歓迎句会 兼題 星月夜 去来忌 胡桃 席題 蝗 |
東 人 水音の澄みては途切れ去来の忌 後肢持てば硬直蝗焼く わし掴みして一つづつ胡桃割る 体折り曲げて薬を掘りにけり お台場に闇のかたまり星月夜 武 甲 咳払ひして掌中の胡桃の音 雌阿寒のアイヌ伝説星月夜 一日を仕舞ひて祖父の蝗焼く 星月夜神火の灯る古宮跡 去来忌や読経の絶えぬ苔の寺 白 美 佃煮となりても群れる蝗かな 背にりぼん結ひし児の服赤のまま 足元に闇の広がる星月夜 胡桃の実異形を内に抱きをり 肩書きの失せし名刺や去来の忌 利 孟 生返事しては蝗の羽むしる 観音の湖見る眸去来の忌 爽かや角切り揃へパンの耳 星月夜葉鳴りせはしく大欅 錆色の浜に傷つき青胡桃 |
法 弘 踏切が閉ざす嵯峨野の去来の忌 まづ降ろす大きな鞄花野馬車 胡桃掌に満つ愛のみで生きる日々 去来忌を修す小鉢の柿膾 逢ふは別れの万平ホテル星月夜 千 恵 子 バリバリと開く唐傘去来の忌 しみじみと命の話星月夜 田に入れば四方八方飛ぶ蝗 身に入むや縄文土偶の口の虚 胡桃落ちしあとに音なき墓の道 笙 ころころと集ひて肥る芋の露 沓脱ぎに桐下駄白き良夜かな 山寺へ辿る杣道去来の忌 瀬音聴く影を濃くする星月夜 胡桃割る人形眉の秀でたり 美 子 リハビリの胡桃おかれしまま逝けり のけ反りし頚より湯の香星月夜 「子曰く」隔靴掻痒去来の忌 |
健 一 消灯の床にちちろの添寝かな 去来忌や四十八字の切れ字考 浜風の砂に寝転び星月夜 蝗追ひ畦踏み外す子らの声 割る人もなき此の頃や鬼胡桃 正 フィヨルドの村の灯仄か星月夜 屋根を打つ胡桃の音や草枕 終の住処探しあぐねて去来の忌 ジェット機の窓に輝く天の川 蝗捕り語る老婆の若き頃 義 紀 なかなかに割れぬ胡桃の混じりけり 過疎村の灯の入らぬ家星月夜 去来忌や俳句歌留多のいろはにほ 学生服の裾の短き休暇明け 萩 宏 星月夜ライトアップの桜田門 キーボードの溝に落ちたる胡桃片 去来忌や筑波を望む新任地 |
希 覯 子 落柿舎に臨時の句箱去来の忌 胡桃割る知恵者の鴉人里に 星月夜象牙の塔に人の影 鶏頭や汝の大地ポリ馬穴 |