兼題 鵜飼 草の市 夜の秋 席題 軸(読み込み) |
東 人 叱られて遅れ徒歩鵜の砂飛ばす 画きかけの絵の具の臭ひ夜の秋 軸受の油の錆びし晩夏かな かけ声に背ナで応へて草の市 疲れ鵜の喉元さする鵜匠かな 利 孟 電話から始まるドラマ夜の秋 取り巻きの囃して子供神輿かな かぶり振る首をむんづと鵜匠の手 かなかなの鳴きつのりては鳴き萎えて 薄ぺらな板の木刀草の市 希 覯 子 草市や手甲で隠る金指輪 提灯に織田の家紋や鵜舟待つ 腹見せるブリキの金魚日向水 幽霊の一軸欲しや暑気払ひ 地下鉄の地上に出でて夜の秋 千 恵 子 藁馬のまづ売り切れて草の市 ぎうぎうと軸大軋み山鉾曲がる 火の粉吹く先へ先へと荒鵜かな 欠け茶碗瀬戸ですすいで水振舞ひ テーブルに湯呑み一つや夜の秋 |
白 美 鵜篝や集まる眼猛々し ひねりたる紙の値札の草の市 女らは腕より灼けてビルの街 地球のかなたに走者夜の秋 尾を高く挙げれば矜持洗ひ鯉 法 弘 鵜篝や揺れて鬼めく影法師 夜の秋のうなづけば揺れ耳飾 水くぐる鵜の爛々の眼かな 自堕落に夢見て生きて夜の秋 草市を戻りて母の跼み癖 義 紀 地球儀の地軸の傾ぐ夏期口座 夜の秋一人テレビを見る老爺 夜濯や新婚妻は職を持ち 二十年振りに会ふ友草の市 疲れ鵜の首を廻らせ沈みけり |
美 子 篝火の爆ぜる真下へ鵜縄引く 鵜の頚のつやつやとして魚を吐く 草市の黄泉の境の空眺む 人声へ振り向き様に夜の秋 炎天に抗ふやうに箱を焚く 正 枢軸といふ語のありし終戦日 母に似る声に振り向く盆の市 鵜篝の燃えつきてより闇深し 障子開ければ朝蜩の峽の宿 寝返りの児に気遣ひの夜の秋 健 一 ひと時の休めるペンに秋の夜 火の波に呼吸合はせる鵜飼かな 炎昼の校庭砂塵走るのみ 草の市笑顔もなしに品渡し |