兼題 バレンタインデー クレソン 東風 席題 冴返る |
東 人 罅はしる大黒柱冴返る 無事無沙汰重ねてバレンタインの日 クレソンの葉先を揃へ根を打てり 青鉾の葱を鋤をり節の忌 いしぶみは山を背にして筑波東風 千 恵 子 冴返る義肢のかさばる脱衣篭 バレンタインデーは他人事魚焼く 強東風に散りてまた寄る群雀 鼻先に寒さ張りつく骸かな クレソンの茎苦く噛み中年期 法 弘 秘仏の扉かたく閉ざして冴返る 強東風が煽る楠公馬上像 クレソンや婚の荷乗せて舟重し 雪折れやいのち死にゆく人の耳 バレンタインデーか人妻のやはらかし 白 美 利休忌や高台歪む陶の碗 クレソンの置かれし皿の金の縁 強東風や横に倒れし植木鉢 枝に差す鳥の食餌や冴返る 欠席児にはかに増えてバレンタインディ |
利 孟 墨匠の名に梅の文字東風渡る クレソンや蝋の封切る芥子瓶 冴返る小田原攻めの一夜城 バレンタインデー硝子の壁のエアロジム 室に住む黴を揉み込む杜氏かな 希 覯 子 はかどらぬ除油の作業や東風の浜 贈り物なきバレンタインの日なりけり 耳かくしてふ髪型や寒明くる クレソンを活かすコップの水替へる 繰り残す雨戸一枚冴返る 正 ほろ苦きクレソン噛んで巴里の夜 君とゐてシューベルト聴く春隣 電話鳴る車内やバレンタインデー 大伽藍バッハの調べ冴返る 東風吹きて利根の流れのゆたかなる 義 紀 日曜の朝クレソンのサラダかな 朝東風や始発電車を待つ女 バレンタイン今日も別れを告げかねて 合格に拳固めし受験生 冴え返る体育館や線交る |
笙 封閉ぢる指のためらひバレンタインデー 風花や木屋町通り灯の入る クレソンの群きらめかす峽の川 山頂へ続く鳥居や桜東風 雪しんしん丹後の浦の朝ぼらけ 美 子 勇退の机上にバレンタインチョコ クレソンを噛んで抵抗する世代 強東風にはためく一筆書きの龍 南天に雪積もる帯母の老 笹鳴きに空軽くなる赴任先 梅 艸 一陣の東風一瞬の二十歳われ バレンタイン降圧剤の無味無臭 風琴のごと頁繰る東風の窓 クレソンの棚適温の判子かな バレンタイン知るや丁字の浮き沈み 武 甲 深山の大日如来冴返る 数よりも中身とバレンタインの日 東風ありと稚魚に告げたる投網かな クレソンや箸置きて嵌まるたまごつち |
健 一 冴返る大きな雲のある梢 薄皮を剥ぎてたちまち葱香る バレンタインデー妻の包みに笑みしこと 朝東風や鼻歌まじる漁支度 若霧のめぐりクレソン花盛り 萩 宏 クレッソンの茎噛むくらいのじれつたさ ベランダでのぼる紫煙や東風の中 気がつけばバレンタインデー過ぎにけり さざ波も東風吹く方へ押されけり 香 里 クレソンを添へて一品腕ふるふ 一つだけカードを添へるバレンタインデー 六時起き水の冷たさレタスむく |