平成九年新年句会 兼題 双六 ひめ始め 太箸 席題 寒波 |
東 人 海上に星を押しやり寒波来る 人妻は関で止められ絵双六 水引の龜の箸置祝ひ箸 あやふやな首尾こそ良けれ姫始め 小刻みに息を整へ糶始め 利 孟 獅子舞のそこに無き尾を噛むしぐさ たてがみに編み込むリボンひめ始め 社長にて上りの出世絵双六 子供箸添へて名入りの祝箸 大寒波黒き海原押し渡り 笙 嫁ぐ娘の名を黒々と祝ひ箸 賽任せ旅はかどらぬ絵双六 朝靄を吹き払ひゆく飛馬始め 身をよぢる枝に降りしく紅葉かな 箸紙に初児の名前大々と 法 弘 寒波来る沖に座礁のロシア船 太古より手順は同じ姫始 伊豆沖のオロシヤの船や絵双六 太箸の少しゆがんであるも佳し 七種やあるかなきかの塩加減 |
希 覯 子 金屏風知事公館の名刺受 祝箸天地のけぢめなかりけり 姫始め南十字の星の下 双六や骨賽の目の墨うすれ 身丈だけ濁す鯉あり寒波来る 美 子 手長神足長神の姫はじめ 夜の桶に家族の数の祝箸 注連飾るアキレス腱のしなやかに 女礼者パスタセットを下げ来たる 双六をせがむ子に負け中終ひ 千 恵 子 寒波来る宿の朝市賑はひて 新内の引きずる闇や姫始め 頭も先も同じ太さや祝箸 双六や廃れゆく世をいかにせん 手水舎の龍吐の髭に初神籖 梅 艸 太箸の我が名のちやんが消えた年 我が背なの時の軽さや姫始 双六や家族合はせか母の断 卓袱台の六十度ごとの祝箸 新歌舞伎座北突き当たりの姫始 |
義 紀 幾度目の別れ話や姫始 パソコンに電源を入れ事務始め 寒波来る街の外れの小さき家 双六の行きつ戻りつ我に似て 太箸や少し傾ぎし子の名前 白 美 新しき香水をふり姫はじめ 一吹きの息骰に籠め絵双六 太箸の置かれて家族恙無し 太箸の紋章伏見の抱稲穂 武 甲 手鏡の紅さす顔や姫始 太箸や居留守をつかふ迎へ酒 酔ひ覚めの首をすくめる寒波かな ヨーロッパまたもや来たる大寒波 甲高き母の小言や初電話 双六や負けてむづかる赤ら顔 健 一 甘酒の湯気ごと飲みて初詣 賽の目に走る目線の絵双六 海鳴りのたちまち高き寒波かな みどり子の大箸包み四駆の絵 耳元にささやく声の姫始 |
正 青春や真昼下りの姫始め 新らしき太箸増えし家となり 上がる馬鹿上がらぬも馬鹿絵双六 寒波来て天気図俄に忙がしく 初日待つテレビカメラと並びをり 萩 宏 寒波待つ土中の種子の元気かな 願かけす親子を染めし初日の出 客が去り祝箸から片付けり 双六の箱破れしを補強せり |