兼題 新酒 落ち鮎 水澄む 席題 南洲忌 |
比呂四 手入れせぬままに盛りて萩の花 樽に耳当てれば新酒呟けり 水澄みて彩の全てを映しけり 落ち鮎の飛沫の中に舞ひにけり 政権の代交代南洲忌 恵一 南洲忌月耿耿と桜島 鰡飛ぶやフェリーは窓に灯を点し 水澄むや小鮒の立てし笹濁り 鮎落ちるかなた大きな夕日あり 犬猿の仲をとりもつ新酒かな 利孟 倒伏の稲を起こして南洲忌 獣めく貌の頑な下り鮎 詰めたての瓶に泡沸く新走り 水澄むや指閉ぢ上がる鷺の脚 仰向きの形が好きで蝉の殻 |
正 鮎落ちて静けさもどる峡の村 アルプスの水より生れし新酒かな 流木に無月の潮のとどきけり このあたり鳥獣保護区天高し 水澄むや硯師に逢ふ甲斐の国 武甲 手招きで輪に引き込まれ今年酒 その裏に紅のほのかに蕎麦の花 水澄むや廃油で走るレトロバス 落ち鮎を素手で仕留めてポーズかな 美子 菰冠匂ふ奉納新走 落ち鮎の瀬を流れては淵に寄る 水澄むや耳目を休め手を休め 足裏の肉の柔か南洲忌 |
義春 水澄みて玉石深く揺るヽかな 眼を閉じて香りを探る新酒かな 落ち鮎や育ちし流れ振り向かず 改札で破顔の迎へ帰省かな 薩摩にて神と祀られ南洲忌 |