第292回四天句会
平成24年12月17日(火)

   
兼題 炭 毛糸 枯れ野 粕汁 漱石忌
忘年句会につき兼題句5句事前投句にて句会


  利孟
煤け鍋据ゑ粕汁のなほたぎる
炭洗ふ漁師が網を繰るやうに
大枯野せばめて雲の流れけり
染め変へて父のお下がり毛糸かな
メモ書きにA.S.A.P.漱石忌

  恵一
ラジオ聴く毛糸の縺れほぐしつつ
粕汁や灯火管制なき夜なる
炭を焼く育てし櫟切り倒し
空に鳴るコントラバスや枯野ゆく
三四郎池にさざなみ漱石忌

  比呂四
かぎ針を持ちてうたた寝毛糸編む
逸らさぬ眼つむりし猫や漱石忌
上出来の音甲高く備長炭
声洩らしながら粕汁啜りけり
照り返す夕日煌めく枯野かな

  あやの
夜更かしの粕汁を盛る根来椀
皺の手の金の指輪や炭をつぐ
祖母の編む余り毛糸の指人形
漱石忌文に逸話のさはりなど
枯野来て土竜の穴の夥し

  武甲
炭俵背負子に山に積みて祖父
粕汁や徹夜仕事のギア入る
前足のジャブ出す子猫毛糸編む
漱石忌香煙漏れる雑司ヶ谷
躍動の命を仕込む枯野かな

  義春
道後湯の帰りの団子漱石忌
雲流れ飛びて枯野の静寂かな
埋火や明治の女が口癖で
兄弟の二着で一つ毛糸玉
粕汁や大志を抱け若き人

  雨竜
三代の棲む家の梁
熾し炭ラッパ鳴らして豆腐売り
携帯電話を失くして風の枯野かなかな
漱石忌鉄輪めぐる石畳
粕汁に生みたて卵を落としけり