第304回四天句会
平成26年12月16日

   
兼題 冬凪 冬の鳥 鰤
席題 餅搗き



  利孟
何も無き地を啄みて冬の鳥
機動隊宿舎の総出餠を搗く
七輪の脇で手焙り歳の市
寒凪や言葉もなくて網手入れ
塩鰤の背負はれ菰に血の滲む

  あやの
散り紅葉石の兎の埋もれゐて
鰤大根最低気温を記録して
群れ鳥の白さ眩しき冬の凪
鐘楼を過ぎ粒となり冬の鳥
餅搗の米屋番重積み重ね

  義春
冬凪や網を繕ふ老漁師
寒禽の万羽鎮守の杜に鳴く
鬨揚げて歳末商戦開幕す
嫁ぎたる娘に大き鰤一尾
せがむ児の手を振り払ひ餠を搗く

  武甲
寒鰤や舳先に海の見え隠れ
遠巻きに餌付け窺ひ冬の鳥
冬凪や訓練生の菜つ葉服
この気持ちご破産にして日記買ふ
餅搗や「ふなっしー」に沸く保育園

  比呂志
冬凪や蒸気泡立てポンポン船
ゆるやかに湯気の渦巻き河豚雑炊
鰤鍋の湯を濁らせて浮く脂
冬鳥の葉を掻き分けて藪のなか
合ひの手の声も練り込み餠を搗く

  雨竜
のびやかに鳴き交はしては冬の鳥
冬の凪釣り糸垂れて岩の上
明けやらぬ朝に湯気沸き餠を搗く
腹に黄の波打つ鰤の魚市場
雲重し雀小さき寒さかな

  恵一
寒禽の発ちて一枝をゆらすなり
餅搗のけふも良く合ひ父母の息
釣り堀に鮒を釣りゐてクリスマス
照り焼きの鰤の焦げ良きフライパン
冬凪に動くものなき真昼かな