発足句会 文化センター
平成8年5月24日
袋詰めしたる地卵風薫る
樟若葉笑ひ閻魔の口の闇
マロニエの花の傾ぶく程紅し
会田比呂
辻々に響く析頭渡御はじめ
御旅所に着く度肩を入れ替へし
醒め遅き抜歯の麻酔木下闇
青木清俊
水芭蕉雪どけ水の中で舞ふ
街路樹の若芽をゆらし風かをる
遠雷で梅雨あけちかしあまがへる
伊藤均
入学の幼き顔が遠ざかる
げんげ田にわが子遊ばせなつかしむ
遠足は明日の天気で眠られず
池田孝明
水田に雲を浮べて水温む
たんぼぽは綿菓子のやうに競ひ咲き
五月晴れ緑おりなす山の里
待ちぼうけ心なごますかたつむり
雨あがリキラリと光る青葉かな
くらやみにひかりで交はすほたるかな
大坪和人
薫風にたんぽぽふわり空を行く
雨上りやしほつつじの色やさし
早苗日に吹き渡り行く青葉風
小又美恵子
青葉にも鼓動伝わる野外ステージ
藤簾君を思ひてそつと触れ
開け放つ窓より入りし青葉かな
茅島正男
早植ゑのまだまだ残る土の色
姿見せまだ早々と鮎群れる
風薫る水面に跳ねる雑魚の群れ
小林美智子
弧を描く葉先に座る雨蛙
ままごとの皿の紫陽花あふれ出す
万緑の光に染まる自カーテン
薫風に心弾ませ家族連れ
かつこうの止まりし枝に青葉萌え
蝸牛若葉の露を飲みてをり
手塚須美子
いちはつや軒に背伸びし咲きほこり
母の日に静かに甘き新茶飲む
帰り道パステルカラーで春を知る
永松邦文
若葉寒むルーズソツクス憚らず
リラ冷えや出番うかがふ揚羽蝶
栃の花陽射しを弾く俄雨
福田匡志
柩打つ石のひびきや春疾風
春の香や覇気わきいづる道場の上
夕東風や波立て光る魚の群れ
堀江良人
花の香を覚えし辺り若葉垣
街路樹の装ひととのひ風薫る
一時の雷雨過ぎ去り燕飛ぶ
柿若葉たたずむ人を青く染め
ガボツトの乱れ稚く風薫る
青葉風踏みリハビリの一歩かな