第25回 平成10年6月26日
アーバンしもつけ
影が後追ふ大股の夏帽子
若鮎の腸ほの甘き水の味
梅雨晴間菓子に移りし経木の香
バスを待つ人の手庇花梯梧
会田比呂
滴りの胸を濡らして磨崖仏
大簗の組まれ川波弾み出す
丹の橋を掛けて箱庭仕上げとす
夏帽子雲の流れるカルデラ湖
田中晶
磐座は遥か名山滴れる
地境は今も板塀雨蛙
過疎の村カンナの赤をもてあます
夏帽や七つ釦の遺影古る
池田孝明
野仏も沐浴なりや梅雨の雷
夏帽子窓の縁より見え隠れ
薄曇り稜線浮かぶ夏の山
薫風や心通はす歌供養
陶芸に命吹き込む夏帽子
山滴る杣人だけが知る小径
誰を待つ日傘のひとつ廻りけり
子役者の面をはずしてラムネ飲む
茅島正男
白き花雫を集め夏つばき
滴りの山にこだます鷹の声
昼高く額の影や夏帽子
梅雨靖れ間棹のしなりや白き布
川村清二
谷間の風に飛ばされし夏帽子
振り向けば山したたるや谷清水
紫陽花や床几に届く串団子
さつき枝折れて添へ木でひた隠し
田中鴻
懸崖の山滴りに渇癒やす
我慢して夏帽技る園児達
岩肌の山滴りや鳥の詳れ
川遊び麦稈帽が流れ着き
夏帽の向きの揃ひて登山口
明易やくぎづけ試合山滴る
行商の魚の匂ひの夏帽子
地震過ぎて震へる猫やうちやう蘭
水松邦文
網棚に夏帽ひとつ無人駅
堀端の交通巡査夏帽子
滴りを浴びて山鳥高く鳴き
夏帽や耳の形よき十五歳
仁平貢一
句を習ひ人生円く夏帽子
千本の格子戸の宿菖蒲咲く
追ひ越せば吾が恩師なり夏帽子
滴りの枯れることなし神の山
福田一構
滴りて水琴ひびく城址かな
やはらかな水面のひかり蛍かな
黄昏れて頭たれたる七変化
夏帽のちよつとあみだの園児かな
でこぼこの肌をさらして山滴る
畳まれてひと,らとなり夏帽子
飛石の石の一つは蟻の道
もどり梅雨くるくる変はる子の機嫌
堀江良人
栗の花雨の煙に遠ざかる
寺巡る妻の阿弥陀のの夏帽子
雲低き暮色にちやめ際一平ちぬ
家並はご影落たず半夏生
三澤郁子
遠郭公尚仁沢は水どころ
バスを持つ人のまぶかに夏帽子
夏帽子見つかつてゐるかくれんば
山滴る石の平に休みけり