第24回 平成10年5月22日
アーバンしもつけ
夏めくやアルミの楯に覗き穴
走り梅雨団地大売り出しの旗
弁当の田の字の仕切り豆ご飯
山支度して待つ電車走り梅雨
会田比呂
家移りの錠をおろしてつばめ来る
はじき豆尻より嬰の立ち上がる
メーデーの殿につくうば車
神饌粽人さまざまの祷りかな
田仲晶
田水張り村にもどれる蒼き闇
金色の赤子の産毛聖五月
音階のなき羽音や花ざくろ
麦秋のつきるところの遠筑波
岩本充弘
葦切や刑事の勘の冴えてをり
分水路岐れ岐れて苗代田
万緑やトロツコ道が知る歴史
初夏の風練習曲の譜を運ぶ
新緑や一句もできず深呼吸
寝ころびて地平線やれんげ草
筍の十日もすれば親の丈
五月晴れいつまで写す水田かな
川村清二
菅笠も今は古田植ゑかな
五月晴れ歩く道筋一里塚
たらの本を探し芽を摘む輩かな
御順路で殿下を待つ人峰櫻
後藤信寛
遊ばれて戻れぬままのおじぎ童
皿模様の透き通る水まんぢゆう
打ち水の光眩しき若女将
噴水に戯れすべる水澄まし
田中鴻
母の日の好物探す子供達
輪になつて箱庭造る子供たら
五月場所一喜一憂翁達
初孫の未来託した鯉のぼり
何かにとひまのなし日々五月かな
百の声時に一つに蛙の田
上下の風振分けて吹流し
木道の深き湿りや夏来る
永松邦文
講釈を言ひつつ喰らふ初鰹
風五月土俵は今日も荒れ模様
狭山から新茶おくると便りあり
眼科医の白衣のプレス風五月
仁平貢一
河鹿鳴く川辺に村の共同湯
奥飛諄の古き湯殿や河鹿鳴く
舟道に堤をあけしあやめ祭
舞扇くづるるごとく牡丹散る
福田一構
むせかへるここは陸奥牡丹園
持ち寄りし蕗の二皿五月かな
庭仕事終へてぬるめの新茶かな
初夏や若きこだまの茶臼岳
片仮名のルビふる英語花水木
蕗を煮る味足すたびに艶増して
長々と続く貨物車麦の秋
下ろされて地面に嵩の鯉職
堀江良人
境木の卯の花咲きし広野かな
山百合を残し山田の畦を刈る
田の川に屏風並びの花菖蒲
鉾に似て房は膨らか栃の花
三澤郁子
幹太き山毛欅の木立の若葉風
灯のともる深夜のビルや栃若葉
SLにゆつたり引かれ新緑ヘ
五月晴れ牛黒々とたむろして