第38回 平成11年7月23日
アーバンしもつけ
目覚しのごとく出し抜け蝉の声
獣めく目をして見つめキヤンプの火
新しき軍手を加ヘキヤンプの荷
テントの夜地の凹凸に背をゆだね
田仲晶
初蝉の出だしいささか躓けり
朱夏の街少女に生まる恋一つ
闇厚き山の一点キセンプの灯
音ごとに闇を拓きて揚花火
会田比呂
梅雨深し下絵のごとき山の色
鮎宿や釣果の丈を並べ合ふ
白みては消す看取りの灯蝉の殻
草の香の強き寝床やキヤンプ村
池田孝明
校庭に屋台の並ぶ夏休み
山車を引く少女の指の白さかな
ひぐらしの声背にうけて野良帰り
通り雨祭り化粧の児等走る
下駄の音大小ありて夏祭り
校歌今キヤンプ湖畔を包みをり
末裔の絶えたる墓石法師蝉
砂日傘研を忘れて主を待つ
片山栄機
夏草や夕闇迫る那須湯本
朝顔の蔓を支へに導けり
キヤンプ地や流浪の鳥散策す
蝉時雨湖面をすべる艇二つ
川村清二
背伸びして結びし願ひ星まつり
眠る子を抱いて茅の輪をくぐり抜け
年かさの担ぐ太鼓や虫送り
参道を通りて止まぬ蝉時雨
田中鴻
呆け蝉の白熱灯に体当たり
キャンプの火崩れば縮む踊りの輪
山毛欅の木の瘤に反り身の蝉の殻
蝉の声この辺りかと目を凝らす
テント張る庭に街騒遠ざける
野営地の男ばかりの炊事場
飯盒のお焦げを分けてキヤンプの夜
永松邦文
梅雨明や男体山の峰近し
鳩笛の色鮮かに夜店の灯
父の日や塩粒光る軍鶏の串
鬼ゆりや己れは知らず媚薬の香
仁平貢一
みちのくの旧藩邸の百日紅
火を借りて点す浜辺のキヤンプかな
蜘蛛の囲や白墨構へ幾何教師
無人駅夕日静かに唖の蝉
福田一構
朝まだき水場に列のキヤンプ村
飯盒の水は手計リキヤンピング
つぎつぎに色とりどりのテント村
汗ぬぐふ女剣士のピアスかな
紫陽花の蕊点々と旅の靴
湖よりの風きらきらと蜻蛉生る
網棚に溢れ床にもキャンプの荷
対岸に奇岩連なり蝉時雨
堀江良人
峯雲を背に男体山低く見ゆ
キヤンプの火谷の瀬音を遠ざけり
あぶら蝉正午のサイレン遠ざけり
森の蝉驟雨の中を鳴き止まず
三澤郁子
陽明門囲める木立蝉時雨
蝉時雨昔天領たりし村
組あげし榾燃えさかるキャンプかな
陸離るだけで涼しき遊覧船