第48回 平成12年5月26日
アーバンしもつけ
若葉風通し矢を射る眼鏡武者
葬送のひそひそ話走り梅雨
逃水や指に当たりし探しもの
青歯朶の鱗の匂ひ蛇祭り
大垣早織
早苗餐の早や大の字に寝入り父
囮鮎光残して瀬にまぎる
筍飯の一升釜の底の焦げ
真直ぐに岩打つ滝のとどろけり
片山栄機
鉱泉の湧き立つ谷や山つつじ
梅雨晴間手に包帯の娘行く
豊かなる水に若鮎跳ねゐたり
電車待つ連絡橋や青嵐
川村清二
気に入りのズボンきつめの更衣
腰伸ばし移る棚田の田植ゑかな
滝壺の虹はしぶきを浴び育つ
解禁の鮎を骨までむさぼりて
屋敷神まで香のあふれ忍冬
地面まで達する長さ藤の房
客待つやバラのアーチを整へて
石楠花に迎へ送られ山登り
へんみともこ
山躑躅燃え扉を閉ざす御用邸
果樹園の空一面の芽吹きかな
パン生地をしばしねかせて栃若葉
ばつさりと葉を落とされて蕗の束
堀江良人
稲妻の横に走りて遠ざかる
山寺のれんげつつじの灯の如く
腕白の気炎のごとき山つつじ
滝の音岩魚の影の逞しき
三澤郁子
鮎放つ那珂川堤治水の碑
水が水はじきて落ちる神の滝
大滝の風にきらめく飛沫かな
瀬の音につつじ燃え立つ峡路かな