すぎ47回
第47回 平成12年4月28日
アーバンしもつけ
大垣早織
鳥の声真似る口笛春惜しむ
筆くはへ繰る歳時記や傘雨の忌
思ふよに進まぬボート桜散る
片山栄機
参詣の道を浄めて花吹雪
あぜ青み万太郎忌となりにけり
三人の子に「サクラサク」花の夜
車窓より美術館見え春惜しむ
川村清二
畦塗りの鍬を支へに歩みけり
散り余るものを荷として花筏
惜春の宴に集ふ亭の席
田中鴻
惜春の病窓にある友の顔
傘雨の忌早仕舞ひする教習所
回り道してたらの芽を一握り
仮免を得て教習生春惜しむ
とこゐ憲巳
花水木親子それぞれ電話して
菜の花や渡良瀬川の水早し
汚れたる幣の束積み春惜しむ
春雷やタクシーワイパー動きづめ
永松邦文
ゆく春や孔子の像の暗き部屋
惜春や没日を避けて藍染屋
風抜ける紺屋の軒の五月晴れ
ゆく春や古墳の街に絹の雨
福田一構
長電話の母似の声や春の宵
花吹雪一号線は九十九折れ
臨月の教師ソファーに目借時
退職の短き惜辞弥生尽
へんみともこ
花冷えや上目づかひの小屋の犬
春惜しむ青菜色よく茹で上げて
ぼんぼりの堤へ続き花盛り
芹匂ふ買物袋に手のふたつ
堀江良人
葉桜の風やはらげり鳶の笛
たむしばの花を透かして那須の尾根
太公望めきて野川の春惜しむ
傘雨忌や土地の芽吹きのたをやかに
三澤郁子
惜春や離合集散万華鏡
目つむりて聴く笛の音や傘雨の忌
押し花にして千年紀の春惜しむ
シンプルに生きるもよろし蝌蚪生るる