第57回 平成13年2月25日
日光ホテルとく川
噴煙の西へなびきて春兆す
玄関を点せば香りヒヤシンス
豆を撒くしぐさゆるりと鎧武者
初音かな窓いつぱいの富士の峰
へんみともこ
竹林の風に膨るる初音かな
那須連山朝日を浴びて眠りけり
具し縫ひの縫ひ目揃はず冴返る
大雪庇尖に刃の光もて
三澤郁子
ペンションに鳥の歳時記山笑ふ
冴返る窓に眉月はりついて
産土の杜にあふる日初音かな
唐突にΩの背伸び猫の春
大垣早織
病室の時刻む音冴返る
谷ごとに呼びかけあひて初音かな
サイレンの過ぎ行き寒の戻りけり
梅の枝飾りワルツを聞きにけり
人のゐるベンチの並び冴返る
川村清二
参道の笛にまぢりて初音かな
田中鴻
牧場の人馬共々息白し
栃木昭雄
初音かな幼子野辺に二歩三歩
冴返る大猶院の護摩札受けて
遠吠えに深まる闇の冴返る
初音して四股を踏みたくなりにけり
初音かな織姫山の裾に住む
出刃研ぐも男の料理春浅し
定食屋の今日のおすすめ浅蜊汁
福田一構
鴬の声ばかりして去りにけり
みどり児の髪を洗へば春の雷
着ぶくれてあれこれ指示を終りけり
堀江良人
男体山の輝き増して冴え返る
腰高に芹摘む妻に夕日さす
行く水の時に細波冴え返る
立春や川面の返す陽の眩し