第５８回 平成１３年３月２１日
春宵のソースたつぷりメンチカツ
ブランコを漕ぐ赤い靴脱ぎ捨てて
春月や筋目正しき碁盤の目
鯉の背の藍鮮やかに風光る
栃木昭雄
ぶらんこや泥靴空を蹴りあげて
立ち漕ぎのブランコの声空に飛び
肩書きを捨て春月の窓に倚る
春の月手打ちの蕎麦の香りかな
堀江良人
ふらここのきしみの誘ふ夜風かな
春の月新幹線は野を走る
ほろ酔ひや雲に長居の春の月
春一番ひねもす騒ぐ髪の森
福田一構
介護用ベッド組み立て春闌ける
雛飾る少女の口のほくろかな
ふらここを漕ぐ気怠さをふり払ひ
まさおなる東京の空雁帰る
露座仏の頬に肩にと春の風
花しどみ会津の宿のそば処
大手門開き黄蝶を招き入れ
蔵の扉の開け放たれて花菜風
川村清二
宿坊の広き廊下や名残雪
天に声届けふらここ高く漕ぐ
握る手に指輪の触れて春の月
青き踏む一番先に母の杖
田中鴻
ふらここを漕ぐでもなくて老夫婦
頭垂る竹の間の春の月
一鍬に蛙飛び出す田んぼかな
とこゐ憲巳
琴の音で客を待つ店春の月
へんみともこ
棕櫚の葉にひかりの鋭り春北風
鳥の声拡がり雪解雫かな
古漬けに酒の匂や草青む
裁ち終へし布に頬杖春の昼