第67回 平成14年1月27日
ともこ
★改装の壁にポスター春まぢか
★二日はや音を重ねて皿洗ふ
傍らにつぶやく薬罐霜夜かな
ふくふくと土の黒ずむ寒の雨
マスクして抱きし赤子に見つめらる
カーテンの襞に息づく隙間風
登美子
★から堀に寒さ鎮めし城址かな
赤色灯犬吠え立てる寒夜かな
良人
寒月の光にくらき森社
朝焼けの富士を遠間に間の明け
稽古着のままに戻りし寒稽古
大寒や目覚めの耳に雨の音
登校す子の顔覆ふマスクかな
寒明くる家光廟の鐘の音
大マスクまぢりて野辺の送りかな
屋上に祀る稲荷や梅笑ふ
大股に児を追ひ越してますくの師
栄機
地下道に響く口笛寒の明け
碁石置く音の間遠く寒明ける
臘梅に春の妖精戯れる
幼児を乗せて自転車春の土手
信子
腕白のかけらも無くて白マスク
軒つらら地へも届けと丈伸ばす
冬枯れや風過ぐ畑の無彩色
明日の春梅酒の梅を口中に
浅漬のよき歯ごたへや寒明ける
花鉢にじやれては倒すうかれ猫
爪先に冷えの集まる駅ホーム
昼電車マスクにこもる大鼾
敬子
塞翁が馬の戒め初暦
杉玉は掛け声に揺れ初荷かな
もどかしや医師筆談の白マスク
清二
また一つ古希に近づく老いの春
妻の肩揉んでほぐして寒の明け
わいわいと児らの集まる落葉焚き
那須岳の風うけ皺の掛け大根
山を背に柿干し小屋の荒組める
すぐマスクはづす女の会話かな
一構
あれこれと妻の指図や年用意
凱旋門にひたひた迫る冬将軍
ウォーキングかはたれ時の大マスク
郁子
初便り南蛮菓子の届きけり
休耕田万の蕾の紅白梅
憲巳
渡良瀬川の小魚跳ねて寒の明け
通学の子を誘導の大マスク
登校の小学生の大マスク
教習のマスクはづして指導員
美代子
潮風や茎だつ菜花摘み取りて
みがき見る手鏡ふせてマスクかな
利孟
裾囲ふ葉の頼り無き寒牡丹
寒明けや消し残されて鶏舎の灯
あれこれの嫁の噂も春隣り
散髪屋出でて取り出す白マスク