第72回 平成14年6月23日
清子 ともこ 芳子 栃木 清二 栄機
比呂 ミヨ 登美子 耕 憲巳
郁子 敬子 利孟 良人 一構
奪衣婆の肋くつきり日雷
端折りたる夢の結末明易し
掬ふ手を上手に拒み屑金魚
ともこ
花ざくろ万年塀の湿りがち
明易しのきにおしやべり雀かな
初夏や智恵子の空に会ひにゆく
噴煙に絹のかがやき夏来る
良人
金魚ゐて静かさの増す蕎麦屋かな
短夜の湯宿の客の声高し
敬子
旅先の固き枕や明け急ぐ
雪渓の蒼は北斗の光得て
一構
降る雨の音を加へて七変化
腰湯して潮岬は梅雨滂沱
樟繁る文化遺産の石の門
登美子
新じやがのほつかりバター溶け出して
そつけなき金魚の顔へ餌落とす
ミヨ
小燕の騒ぎそろそろ朝まだき
星の尾を引くごと筋のこひるがお
耕
明易し木立をくぐる鳥の声
せせらぎに足投げ出して串の鮎
芳子
手の内の嬰の残り香驟雨来る
法要の席のまばらや濃紫陽花
栄機
万緑やポスト改め娘の帰る
泡吹いて見せる金魚の独り言
矢を放つ度の一声夏袴
清子
薄衣シャガールのをんな空を飛ぶ
干涸らびし泥に踏んばりひきがへる
清二
押しつぶす程に塩盛りなめくじら
寺守の話切り無く額の花
湯上がりの裸や携帯電話鳴る
鴻
川岸や鮎解禁の人の帯
明易し短編五話の文庫本
憲巳
明易の明るさ失せし庭園灯
古漬を添へた茶づけや五月闇
ちやぽちやぼと音を配りて金魚売り
昭雄
金魚買ふ大型バイクの男来て
名刹の大出目金の目千両
街角にパン焼く匂ひ明易し
郁子
かたつむり機嫌上々角出して
雉鳩の群れて御社明易し
利孟
葛切のとろとろ蜜に遊びけり
尻見せるだけの逃げやうひきがへる