第82回 平成15年4月20日

特選句は緑色太字で表示
特選句作者を巻頭に、以下入選数で配列しています

会田比呂
夕月を乗せ花筏揺らぎけり
雨後の日を塗して蒔きし花の種
春暁の早立ち蒲団二つ折り

石塚信子
手枕に伝ふ脈音春おぼろ
粧ひし尾鰭の跳ねて桜鯛
土の香を寄せ朝顔の種を蒔く

福田一構
百年の梁黒々と屋根を葺く
一段と糶声高く桜鯛
春雷やひとり手酌も亦よろし

栃木昭雄
春暁の雨お百度の石濡らす
競り声を一際張りて桜鯛
神橋の朱の靄に浮く春の暁
三方に反らせて御饌の桜鯛
花筏背鰭で押して沼の主


とこゐ憲
菜の花を添へ生湯葉の味まろし
尾が動き縁のざわめく桜鯛
春暁や猫と私と端座する
春暁や新聞受けに音入りて

三澤郁子
うらうらとバルーンレース毛野の空
汐ぬれのうす紅色に桜鯛
深海のいのちの彩の桜鯛
色よかとお造りにして花見鯛 泉敬子
盃交はす呉越同舟花筵
春暁や生まれし子牛湯気立てる
網元のしばし講釈桜鯛

大塚登美子
桜鯛久谷の皿の絵と競ふ
眠くなる空の広さや花筵
春暁の止みては騒ぐ鳥の声


大貫美代子
春暁や刻々色の大けやき
弁当に目籠をせ木の芽摘む
一片がちりてひとひら山桜

柏崎芳子
砂遊びもてふりこぼし丁字の香
春嵐ひねもす籠もる映画館
岩肌にからむ走り根花の雲

川島清子
大渦に揺るる筏に川鵜立つ
竹籠に跳ね土壇場の桜鯛
睨み合ひ山椒魚に呼吸合はす

川村清二
朗々とつづく口上弥生際
桜茶の出されて桜祭りかな
孫出来てまた賑やかに鯉幟

標幸一
春暁や藍色に山連なれり
まな板の音軽やかに春の朝
淡雪の消え里山の低き雲

へんみともこ
入社式の改札に待つプラカード
乳色の墨絵の余白花の冷え
逃げ水やねむき眼の道祖神

堀江良人
春暁や夜来の雨の遠ざかる
長雨に明るき枝垂れ桜かな
桜鱒人のひしめく湖の鼻

田中鴻
春眠や小鳥の声を聞きながら
正座して交はす盃桜鯛

森利孟
這ひ出でてまたも熟寝の初蛙
春光や紺地に白の驛名標
受験書に赤の下敷春うらら