第83回 平成15年5月18日

特選句は緑色太字で表示
特選句作者を巻頭に、 以下入選数で配列しています

栃木昭雄
筍採りの足裏にあたる地の命
初夏や雀斑の浮く片笑くぼ
路地住まひ卯の花垣の閑居かな
初夏の風頬に電動車椅子

堀江良人
鯉のぼり谷戸をせましと泳ぎけり
はつ夏や葉音ひそかに風わたる
初夏や連山青く天聳る

会田比呂
鯉幟競ひ泳ぎて進まざる
子を産みに戻りし生家花卯木
はつなつやシェフの帽子の固き糊
新樹光産湯の赤子なほ赤し

石塚信子
初夏の風入れて発つ始発バス
煌めきて曲ゆく川夏兆す
卯の花や家毎にある石の橋
ビル街の朝の静寂や夏初め

へんみともこ
山間に垂れこむ雲や桐の花
筆塚の風ひんやりと樟落葉
笹笛の冴えし音色や夏はじめ
牡丹の芯の煌めく真昼かな

泉敬子
美容院の鏡の奥の薔薇匂ふ
初夏の窓辺によりて眉を引く
錨草廻船問屋に並ぶ蔵

大垣
菖蒲湯を出て捕まらぬ裸の子
初夏や空へ大声「ア・エ・イ・オ・ウ」
ランチへと繰り出す髪に初夏の風

大塚登美子
狛犬の踏ん張る足に乗る蜥蜴
卯の花の蕾を誘ふ小糠雨
初夏や妻が秘蔵の呉須の杯


大貫美代子
黒揚羽はね重たげに昼の月
卯の花や村の人寄る直売所
水の来て田毎蛙の声揃ふ

柏崎芳子
白木蓮散りし駅舎の赤き屋根
初夏の瀬音や風見鶏まはる
大藤の香りの渦に溺れけり

片山栄機
ブランコに一人の老女朝の靄
初夏の風草原にわたりけり
春暁の用水堰に鬩ぎ合ふ

川島清子
こんにやくのうすきお造り夏初め
単衣着る都合5本の紐まとひ
花うつぎ知らぬ同士の足湯客


標幸一
初夏やショパンの調べ運ぶ風
卯の花の散りて明るき峠道
風渡り淡き新樹の山揺れる

田中鴻
閉山の町しらしらと花うつぎ
卯の花の垣で区切りて畑狭し
水田のモザイク模様風わたる

福田一構
卯の花やレシピ片手に取る小瓶
卯の花や雨に明るき金閣寺
奥嵯峨へ初夏の陽のあふれけり

三澤郁子
渓流の鼓音しきり花うつぎ
ひそやかに老いて卯の花月夜かな
胸深く風のあふれて夏初め

森利孟
花うつぎトトロの森に停まるバス
麦の秋杭で荷止めの無蓋貨車
干瓢の白ほとばしり剥かれけり