第84回平成15年6月22日(日)



特選句は緑色太字で表示
特選句作者を巻頭に、 以下入選数で配列しています

へんみともこ
抱きし泡水面に忘れげんごらう
虫干や唐子の遊ぶ羽織裏
熊除けの鈴の音乱し飲む清水
木漏れ日を揺らし清水に手を浸す
脱ぐ靴の駆け込む形夏休み

大貫美代子
標無き山路の風の九輪草
湧水に斑をもみ合ひて雑魚の群
ギヤマンのグラス清水の光受く
夕暮れの灯を扇ぎたて源五郎
石群やランナー赤き鴨足草

石塚信子
方丈の四方放たれて梅雨晴間
そぼ降れる雨の色足す濃紫陽花
小流れの雲の影追ふ源五郎
惜しみなく落花誘ふ沙羅の雨
雨脚の細る間合ひに遠郭公

川島清子
稲光り海一望の玻璃の中
源五郎その縄張りの隠れ沼
短夜や校歌高吟宴果てる
ペック逝く夢にローマのバルコニー
清水掬むチャドルの裾をたくし上げ

標幸一
郭公の鳴く夕暮れや鎌洗ふ
田を濁し我がものもの顔の源五郎
身をよぢり腹の白さを見せ鯰
イグナチの昼の鐘鳴る夏木立
水筒に受けて音鳴る山清水

柏崎芳子
ひさかたに峡のにぎはひ鮎解禁
木道の標のひとつ湧き清水
源五郎水面の雲をくぼませて

大塚登美子
水面へと太き足蹴り源五郎
田の畔や赤いポットの新茶注ぐ
若やぎてあぢさゐ坂の同窓会

福田一構
サングラスはづし土産の品定め
負けてなほ意気軒昂の五月場所
朝凪や鴎見送る大漁旗

川村清二
跡継ぎが無いといふ愚痴田草取り
登り切るまで坂道の濃紫陽花
湧水の取水ホースの人の列

三澤郁子
げんごらうはやたそがれの水明り
雷の遠とどろきに目覚めけり
梅雨苔を育て伽藍の柱石

とこゐ憲巳
コッヘルで沸かす珈琲石清水
底の砂舞ひ踊らせて清水湧く
父の日のリボン大きなプレゼント

栃木昭雄
笊二つ沈めし茶屋の清水かな
空一目見てまた沈み源五郎
名水と呼ばれて売らる清水かな

堀江良人
畔沿ひの野川のにほふ源五郎
源五郎ゆらりと鮒のあとに付く
風抜ける城のはずれの薪能

田中鴻
悲雷母の元へとかけよる子
ぶつかりて子蟹遊べる苔清水
梅雨晴間山の陰より現るる汽車

森利孟
闇に音立て鉱毒といふ清水
梅の実の雨に太りて陽に熟れて
源五郎落ちて畳に溺れけり
>