第92回 平成16年2月15日


     登美子
☆ 折り紙の谷に折り込む春の冷え
  エプロンの母が先頭鬼やらひ
  ひらがなが少し読める児鬼やらひ

     良人
  雨にけぶる畑に人影春立ちぬ
  甲高き声に猫飛ぶ鬼やらひ
  小鳥追ふ猫の目険し春立ちぬ

     敬子
  県境の大利根を越え蜆売り
  春浅い鉄扉煌く太鼓門
  雪煙忍者佐助の修行の地

     鴻
  鍬を振る後を鶲の餌を漁る
  渾身の吾子の大声鬼やらひ

     憲巳
  てつちりの湯気にはづみしクラス会
  水仙の海風に耐へ海を向く

     ともこ
  風花や剥がれかけたる石の苔
  臘梅や薄紙挟む朱印帳

     比呂
  梅東風や指もて宥む眼の疲れ
  渇癒す裃傾ぐ年男

     昭雄
  那須の野の光となりて春田打つ

     一構
  車椅子で鳩に餌をやる日向ぼこ

     利孟
  動くものをらずもゆるみ鴨の陣
  春寒といふ腰椎に迫るもの