第94回 平成16年04月18日


     比呂
☆ 蚕ざかりや塩のざらつく握り飯
  様つけて呼ばる蚕の深眠り

     良人
  天霧らふ中有明の春の月
  華やぎは桜の花の無人駅
  水温む利根の川面の靄白し
  雪煙に紛る一筋飛行機雲

     芳子
  桜散る五百羅漢の肩に手に
  長閑さや二時桃色の花時計
  鉢花のいろとりどりや囀れる
  幣下げし梁黒き飼屋かな

     幸一
  手の皺の数を蚕とくらしをり
  茅葺の里に明るき黄水仙
  手に重き傘の名残の雪払ふ

     鴻
  音も無く桑の葉毛蚕の喰みすすむ
  老木の花を囲みて宴かな

     清子
  朧夜や人無く上る観覧車
  島唄や南風に向かひて行く牛車

     敬子
  スキップを競ふ姉妹や花堤
  蚕時並び寝起きの嫁姑

     登美子
  風吹いて落花の渦のはなれゆく
  花の昼蔵の二階に闇座る

     ともこ
  吊橋の揺れの止まらず花吹雪
  梁の粗き手斧目蚕飼ふ

     昭雄
  春蚕透けるいのちの深眠り
  星の夜蚕は透けて深眠る

     利孟
  眠蚕の夢つめて身の透きとほる
  屋上の社と鳥居風光る
  花くづを寄せてそば屋の出すのれん
  夜桜や囃子とよめば散り急ぐ