第112回 平成18年2月
投稿句会
★ 日の光雪解雫に籠り居り
◎ 雪原に残す風紋風すさぶ
・ 重畳の山懐の春浅し
・ 瀧壺の纏ふ氷の鎧かな
・ 和らかな光を抱いて座禅草
一構
★ 雪解光宿の亭主の白き髭
◎ 気合てふ礼のやりとり寒稽古
・ 春浅し下校児童に付き添ひて
・ 春浅し母の遺品に感謝状
古希近し縁で初音を聞く日和
鴻
◎ 春浅し野辺の草々伸び鈍く
◎ 音立てて土手を崩るる霜柱
・ 谷川の骨まで沁みる雪解水
・ 春の鴨潜る水面に足残し
広き田の畔まで埋めて根白草
◎ 湯気立てて運ばる堆肥雪解道
◎ 梅開く照りて眩き化粧砂
・ 雉鳩の何かをさがす春の庭
・ 座禅草時を刻める水の音
春浅し窓を横切る鳥の声
美代子
◎ 蛇行して日向日影の雪解道
◎ 仕事師の指の胼胝撫であんかう鍋
・ 塗り替へて眩しきボート春隣
・ 臘梅のほのと解れて日の宿る
瀬の音や粒のつららの草登る
昭雄
◎ 春浅し声にして読む殉難碑
・ 春浅し石蹴りて行く下校の子
・ 堰に音集めてあふる雪解水
・ サーカスの喇叭雪解の北の町
鳶舞ひて那須連山の雪解かな
◎ 丸めたる背を過ぐ風田芹摘む
・ 春浅き湾に行き来の作業船
・ 先触れの鉦や太鼓や春御輿
・ 騎馬像の面に滴り花の雨
峡の村棚田にあふれる雪解水
幸子(植竹)
◎ 碁敵の幼な友だち春浅し
・ 朝日さす崖の端より雪解水
・ 黄味帯びる猫の両眼福寿草
野焼きして炎を焦がし黒き肌
婆ふたり高笑ひして春の縁
敬子
◎ うたた寝の湯宿の雪解雫かな
・ 観劇に誘ふ文来て春浅し
上州の訛外湯に余寒なほ
リハビリの窓に癒しのシクラメン
大寒や赤き胴着の座敷犬
・ 名を知らぬ鳥の鳴き出し春隣り
・ 墨の香の反故の山なし春浅し
・ 笹舟の沈みてはまた雪解川
雪解山二羽の小鳥の住処かな
春浅し香料の香を替へにけり
芳子
・ 雪解けの山襞蒼く丸みけり
・ 春浅し固き蕾に声かけて
・ 露天湯に色を足したる落ち椿
張り紙に初午の旗と走り書き
梅祭り足音軽く園巡り
雪解川分厚くうねる波頭
霊峰の雪解の水に湖膨る
雪解けて慣れし山容取り戻す
山門不幸ごろんと一つ春の雷
ヴァイオリンのか細き哀歌猫の恋
利孟
浅春の締りまだるき自動ドア
券売機に入れる湯銭や春浅し
雪原に翳の深まる雪解かな
雪原に鉄軌掘りたて往く列車
主無き書棚の埃春隣り
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