第118回 平成18年8月20日
   聖子
★ 占ひで消えしこだはり暑気払ふ
◎ 暮れ泥みだせば高まり盆太鼓
・ 裏山に祖父の植ゑし木蝉時雨
・ 山見えてより国訛り帰省かな
  茄子をもぐ母丹精の土踏んで

   伊藤
◎ 日の暮れてまだ鳴き足らず杜の蝉
◎ 蔭を出て影を連れたる黒揚羽
・ 薬湯の効くも効かぬも暑気払ひ
・ 暑にたまりかねて風鈴鳴りにけり
  枕辺にラジオ朗読夜の秋

   敬子
◎ 仏滅の日めくり剥がし暑気払ひ
・ 白南風や霞ヶ浦に帆曳舟
・ 裾捌き叙する久闊青簾
・ 湯の宿にショパンの曲や夜の秋
  新涼や茶の三音にゆとりあり
   比呂
◎ ギヤマンをきりきり冷し暑気下し
◎ 父送るはや尻黄ば瓜の馬
・ 垢離を取る程無き願ひ夜の秋
  さるすべり庫裏に干されしアロハシャツ

  
・ 客の来てより甚平を羽織りけり
・ 田仕舞のままに合寄り暑気払ひ
・ 草毟る媼の小さき背中かな
・ 外つ島の土産の塩や暑気払ひ
  アドバルン風になびきて夜の秋

   登美子
◎ 目隠しの手のなめらかや夜の秋
・ 鐘なりて大文字の火が走り出す
・ 八月や谷固く折る紙の鶴
  卓袱台の真ん中茄子の濃むらさき
  ほろ酔ひの清談たのし暑気払
   ともこ
・ おしやべりのやがて寝息に夏休み
・ 軒簾声の連なる登校日
・ 夜の秋石にのりたる緑亀
・ 鷺草や五寸四方の空あらば
  箱共に枡形本を曝しけり

   昭雄
・ 幼き日よりの川瀬に追へる鮎
・ 手の甲に塩をつまみて暑気払ひ
・ 怒鳴り合ふ無線の通話鮪船
  淵滑る舟の一灯夜の秋
  語り部の「だとさ」で終る寺の夏

   岩崎
・ 暑気払ふ地下足袋固き鳶職人
・ 夕凪や浮子も動かぬ竿の先
・ ダム底に沈みし村や星月夜
  最終便発ちし桟橋夜の秋
   良人
・ 出羽の地の端縫ひ衣装の踊かな
・ 覆面の目に火の映り盆踊り
・ 山の端にかかる雲見ゆ暑気払ひ
  街中の並木路暗し夜の秋
  踊る輪を無言で照らす夏の月

   一構
・ 石畳に蚯蚓乾らびる昼下がり
・ 少年の白き道衣や夏稽古
  バロックの曲聞く朝梅雨明ける
  遠雷や夫と夕餉の焼魚
  雷鳴や仏に供なふ花活ける

   植竹
・ 馬の背を分けて驟雨のゆけるかな
・ 声高に酌み交わしたり暑気払
  対岸の鮎焼く煙香を連れて
  遠汽笛静寂を割きて夜の秋
  蝉時雨怒濤のごとく音しまく
   清子
・ 端居する場所心得て通ひ猫
・ 遊水池大夕立を呑み込めり
  暑気払ひ仲間たちまち愚に返る
  妻の留守の夫のあやす子夜の秋
  英会話塾の賑はひ敗戦日

   美代子
・ 薬草のたゆたふ湯舟暑気払ふ
・ ハーブティーの琥珀の色や朝涼し
  風放ち今日は花閉づ睡蓮花
  濃く淡く花野織りなす雲のあし

   芳子
・ 廃村の庄屋の屋敷合歓の花
・ 手習ひの墨の色濃き大暑かな
  大あくびひとつ呑み込み籐寝椅子
  ラベンダーの丘に溶け込む空の色
  岩裂きて闇より生づる滝しぶき
   利孟
  壁ぎはに並ぶ鞄や暑気払
  食べ切れぬほどが御馳走油蝉
  ドアホンにまづ雑音と虫の声
  ナイターや四方に影の外野席
  闇のその奥に惑星夜の秋