第130回 平成19年8月19日
   比呂
・ 色艶のよきを選びて茄子の牛
◎ 夏風邪や卵小さき烏骨鶏
・ 白木槿朝鉢の声透きとほる
★ 鶏の瞬き止めし大暑かな
★ 繕ひの赤き網糸晩夏光

   ともこ
・ 積まれ行く牛の眼差晩夏光
・ 茄子漬の紺美しき朝餉かな
・ 目高の子一雨欲しい雨水甕
★ 針山の針の総立ち稲びかり
★ 夏座敷香炉の蓋に座る獅子

   敬子
  松花堂に盛られし茄子の揚げ煮かな
・ 蝉の昼足場に肩を並べをり
◎ 落人の石碑にひそみ袋蜘蛛
◎ 放ち鶏あそぶ山家や晩夏光
・ バスを待つ百日紅の傘の下
   昭雄
・ 鳶舞ふや夕日の沈みゆく晩夏
◎ 山盛りのきらめきを買ふ茄子かな
・ 大トロの醤油をはぢき晩夏かな
・ 濁流の渦に漂ふ茄子の馬
◎ 白日傘たゝみて道を尋ねけり

   憲巳
・ 七十四年振りてふ記録秋暑し
・ 食欲の増すおかずかな茄子炒め
  参院選結果の読めて茄子熟る
◎ 玄関の土間に猫寝る晩夏かな
・ 茄子熟れて母の記憶の甦る

   永子
  もぎる手に棘のちくりと初なすび
・ こまくさやリュック下して出す合羽
・ 玉の汗流れ櫓の組み上がる
◎ 雲湧いて山に雨呼ぶ晩夏かな
  背丈みな小さく揃ふお花畑
   美代
  大滝の音たち昇る晩夏かな
・ 教科書の墨の斑や終戦忌
◎ のけぞりて切なる太鼓盆の月
  切り戻すなすび息付く雨上り
・ 燻製の匂ひ洩らして八月尽

   芳子
  燃え尽くす秘めし恋色凌霽花
・ 坐禅堂出し身に受け蝉時雨
・ 大皿大鍋だして帰省子迎へけり
◎ 菊牡丹競ひて散れる大花火
・ 一心に素振りの剣士雲の峰

   良人
・ 釜揚げの乳茸と茄子の炒め汁
  昨晩に続き朝餉も茄子汁
・ 那須の湯に風そよと来る晩夏かな
  ビル越しに夕星浮かぶ晩夏かな
  昼食の出前の汁の茄子汁
   信子
  紫紺の実一つといへど鉢の茄子
  川下り終へて晩夏の舟着き場
・ 簗籠の太郎次郎や鮎の川
  夏の果て彩を尽くせる御成門
・ 夜半に鳴く蝉一念の声絞る

  
・ 雨あがる幼稚園児のりの輪
  道端に仏乗せたる茄子の馬
・ 真菰茣蓙仏送りの品揃ふ
・ 土用波防波堤越え寄せ来たる
・ 雑草も結実準備晩夏光

   一構
・ 夏深し青春歌手の老眼鏡
  秋茄子味噌と炒める古希の夫
・ 山古志の村の棚田の晩夏光
  秋茄子は嫁の好物紺さえる
  水茄子や闇の定まる宴かな
   利孟
  熱帯夜鯰のたうつらしき地震
  堀川に渡せる小橋鱧料理
  水を撒くまづ熱水を捨て流し
  茄子一つ鳴かせ洗ひて菜と汁
  校庭に犬迷ひ込み晩夏かな