第133回 平成19年11月18日
   比呂
・ 団地てふ家の塊鵙高音
・ 隠し田の潰ゆにまかせはだれ霜
◎ 狐火や日記にときに小さき嘘
・ 鈴の緒の疲れて細し神の旅
△ 独りごち探す失せ物お茶の花

   永子
△ 電車待つホームに北風の通り道
・ 浦々の日向に並ぶ海苔障子
  立ち話茶の花匂ふ垣根越し
  束の間を狭庭に光る霜の花
△ 改札を抜け冬帽子風の中

   聖子
・ 雨吸ひて黒き藁屋根お茶の花
△ かろやかにめぐれる水車お茶の花
  単線の長き停車やお茶の花
  霜夜経て野菜の甘み深みます
・ 散紅葉どつぷりと浸かる滝見の湯
   ともこ
△ ほつほつと咲いて茶の花日和かな
  霜の朝鼻先つんと尖りけり
・ 尻切れの声を継ぎ足し残る虫
・ 咲分けの紅のひと色返り花
  立冬や赤き紐結ふ木を間引く

   敬子
・ ひとつづつ置かれし石榴六地蔵
・ 数へ歌園舎を囲む花茶垣
・ 年古りし大樹の洞ら草の絮
・ 撫で仏目鼻平らに冬に入る
・ 山鳩の庭に来てゐる霜日和

   芳子
・ 早暁の土を眠らせ霜の声
  父と子にどんぐり独楽の丸き影
・ コピー機の吐き出す紙や暮近し
  辻裏の闇に一灯秋明菊
・ 茶の花や身の丈越ゆる長き弓
   昭雄
  搾乳のホース脈打ち霜の朝
・ 書にあきて探す庭下駄茶の花
・ 強霜の予報子牛の寝藁足す
  茶の花や埴輪哭く口唄ふ口
  カーテンを開けおく鶲来るころは

   一構
・ 暁闇や鹿の骸骨霜に浮く
・ 青空に脚立を立てて林檎狩り
  初霜や熊よけ鈴は闇に鳴る
  初霜やさつと着替へて朝稽古
  遠謀の霜の湿原小用せり

  
・ 山茶花や葉隠すほどに花つけて
  枯草の畑耕すトラクター
  飛び石を突き上げをりし霜柱
  畦焼きや火を踏む子らの声高し
  茶の花や似たる姿の卵焼き
   幸子
  風呂吹きや嫁したる子来て和む夜
  一握り菜を抜く畑の霜柱
・ 茶の花の裏参道の静りに
  菊咲くや陽当る方を選り歩く
・ 神さびて烏帽子の似合ふ菊人形

   登美子
・ 霜の朝こきざみに掃く竹箒
  霜月や胸をはだけて磨崖佛
・ 雲も無き空に目印鳥渡る
・ 賜りしミカンインコと分け合ひて
  茶の花や傘触れ合つて干されけり

   美代
・ 輪塔の掠れし梵字鰯雲
  茶咲いて花のあたりの夕かげり
  霜柱瀬音にほろと解くるかな
  柊のかをり余りし離れ庵
・ 色鳥や山門低く千社札
   良人
・ 赤松の野に入る径や霜柱
  茶が咲いて日当り和ごむ峡の里
  霜畳砂丘のごとく光居り
  金色の蕊を残して茶花散る
  初霜や月山の尾根なだらかに

   利孟
  交番の赤き灯十月桜かな
  診察券入れて順取り霜の朝
  七五三祖父より通ふ写真館
  立冬の厨に焦げのよく香る
  伯爵邸趾の洋館お茶の花