第135回 平成20年01月14日
◎ 寒椿昭和を越えし村役場
◎ 寒椿火色確かむ登り窯
◎ 松の内造り酒屋の水の音
◎ 風筋を頬で読み取り弓始め
天領の春遠からじ鳶の笛
幸子
◎ 酒断ちの胃の腑さびしきなづな粥
◎ 口々に頼み言宣り初日の出
・ 蜜入りのりんごを風呂に松の内
白きもの耐へるごと咲き寒椿
悴みて夫と柏手息合はず
信子
◎ 坂下る先は花街松の内
・ バスを待つ列の白息停留所
・ 初雪のいふほどもなく消えにけり
遠山の澄みし朝や冬椿
三四日続く冬日を楽しめり
◎ 葉隠れの紅の一色寒椿
◎ 北天に澄み居る星座松の内
街中の辻に一本寒椿
朝焼けの富士を遠見に松の内
葉に籠る蕾潤めり寒椿
敬子
◎ 座禅堂のかたき枢や寒雀
・ 先代の手擦れの火鉢蔵座敷
寒椿老舗の宿の釣舟に
松の内厄除け大師に人の波
賀状受く少子化の子に鼠算
芳子
◎ 松の内湯気の厨に人あふれ
・ 聞かぬ手を宥めなだめて春支度
龍太逝き千空召され去年今年
告げられぬままのひとこと寒椿
雪吊や繩張り詰めの逆さ松
・ 列につき受ける名水松の内
・ 松の内朝忙はしなき厨かな
・ 紅白の飴おみくじに松の内
・ 寒椿シャベルの土の匂ひけり
松の内人声とぎれ昼淋し
ともこ
・ 注連飾り揺らして開く自動ドア
・ 木をせせる名知らぬ小鳥初箒
・ 寒椿ひかり差し込む手水鉢
なんとなく過ぎゆく一日松の内
書初やボールペン借り走り書き
美代
・ 鰐口の乾ぶる音や寒椿
・ 涸れ瀧の風に細りし水音かな
・ 注連飾り千年杉の天深む
箱書きの使はぬ器松の内
同胞のちぎり分けし日御供の餅
・ 頑丈に育ち秩父の霜柱
・ ふる里の野菜づくしの雑煮椀
襟巻の狐流眄古りにけり
割れ茶碗の金の繕ひ白椿
袖畳またそでだたみ松の内
憲巳
・ 初市や高崎達磨のつぺらぼう
・ 餃子屋を満席にして新成人
同期会最終となり大吹雪
初雪や老け人だらけ同期会
朝風呂の多き子供ら松の内
一構
・ 焼き鳥の串を数へて松明ける
鏡餅開き懸案議決せり
書初の用紙はみ出す一年生
縄跳びや孫と競へる松の内
実千両鳥の運びて墓に生ふ
・ 鬼師範老いて盛んな寒稽古
臘梅や今年も唯一庭飾る
稽古場を一目覗きて松の内
庭園のヒロインの座や寒椿
冬枯れの野辺を照らせる夕日かな
永子
・ 寒椿挿して厨の窓ガラス
国訛りつられて笑ふ松七日
隙間風のれん押し上ぐガード下
酢牡蛎食ぶ帰る故里まだ有りて
起居する美しき白足袋弓始め
利孟
松の内のたりとゆらぎ田の煙
嫁が君手相判じて開く扉
日の色を貯めて薄紅寒椿
寒椿学校船の通ふ島
神の索取るに行列初詣