第136回 平成20年02月17日
   昭雄
★ 陽を拝む指の節くれ冬帽子
◎ 竜の玉丈三寸の石仏
◎ 啓蟄やビニールハウスにある小窓
  燠となる炭の厳し余寒なほ
  春疾風寄せては浮子を惑はせる

   永子
★ 杉参道昏し余寒の石畳
・ 杜深し垂り雪積む狛の背
  頬に触る風やはらかき春の航
  木洩れ日に瑠璃のつや増す竜の玉
  大根引き馴れぬ手で押す猫車

   ともこ
◎ 余寒なほ鍋を鳴らして茹で卵
・ 薄紙を解けば玉とき室の花
・ 鐘楼の袴石積み龍の玉
・ いろは坂牙剥くごとく崖氷柱
  龍の玉タイムカプセル眠る庭
   比呂
◎ 一滴の跳ねもそのまま滝凍てる
・ 担送車の塞ぐ入口余寒なほ
・ 語尾強き下野ことば太氷柱
・ 籾殻に埋めし卵寒見舞い
  春泥や寺境内の蚤の市

   芳子
◎ 道場の床磨き上ぐ余寒かな
・ 板きしる長き回廊竜の玉
・ 肩寄せるベンチに春の日差かな
・ 猫の恋影絵の鳥の羽ばたける
  水仙や玉砂利響く散策路

   良人
◎ 佐渡隠す吹雪の沖の白き波
・ 遠山の稜線迫る余寒かな
・ 新幹線待てるホームの余寒かな
  ビル影を辻風のくづす余寒かな
  昃れば垣根に光る龍の玉
   幸子
◎ 焔の中に達磨往生どんど焼き
・ 大喜利の果てて余寒の街へかな
・ 黒々と田を潤して雪解水
  久の雨草の間の青竜の玉
  雪解けや岩間伝ひの細水

   美代
・ 紐を解きうす紙を解き雛飾る
・ 巫女の手に曲がりし箒龍の髭
・ 罅なりに崩し寒餅晒しけり
・ 強張りし踵いたはる余寒かな
  雨上がり古葉のぞける花万作

   憲巳
・ 余寒かな母の上着に猫入れて
・ 主無き空家の庭の龍の玉
・ 枡酒の枡の硬さや忘れ雪
  余寒かな指痛くなるマイバッグ
  大八溝霞にかすみ辞する時
   登美子
・ 春近し登校児の列乱れがち
・ 板前の煙草一服竜の玉
・ 干し物に爪立ちつぶす竜の玉
  老木の裾に根を置く竜の玉
  竜の玉分相応に拡がりぬ

   敬子
・ 紙漉きのうすき湯気立つ手風呂かな
・ 四国三郎に舫へる舟や余寒なほ
  盛り上がるリハビリダンス梅二月
  裏木戸に祖父いとほしむ竜の玉
  友訪へば軒にあかるし迎春花

   信子
・ 関東にどか雪右往左往かな
・ 春荒れや郵便物の束かかへ
  昼過ぎて本降りとなる龍の玉
  釦かがるだけで置く針別れ霜
  セラピー犬役終えて臥す余寒かな
  
  蘖の野山を駆ける子犬かな
  泥つきの蕗の薹売る道の駅
  竜の玉紙鉄砲の弾丸となす
  農作業下着重ねる余寒かな
  黙々と老爺終日畑打つ

   志保也
  余寒とて家路を急ぐ水月夜
  光差し余寒の水面春隣
  童遊竜の玉や今昔
  通り過ぎ竜の玉か路地裏に
  余寒かや雲は薄しも白い息

   利孟
  飛石の隙にこぼれて竜の玉
  余寒なほ噛んでほぐせる筆の先
  輪ゴムかけ包む弁当春浅し
  御朱印帖拝み仕舞ひに老遍路
  戦闘帽のセピアの写真利休の忌