第152回 平成21年6月21日


   利孟
 螢の火熾りて風の立ちにけり
 ペン先に紙の相性走り梅雨
 干瓢を剥く一と皮をまづむきて
 必死てふ重さ宥めて鮎掛ける
 ビール函返し夜店の親爺の坐

   ともこ
△提灯の巴の目玉夏まつり
△雨の色縁に滲ませ四葩かな
△山並みを染めゆく夜明け干瓢剥く
★夜店の灯亀の引つ掻く金盥
★わた飴の綿の絡まる夜店の灯

   信子
△梅雨深く今日と明日のすれ違ふ
△老鴬や山を食み出す天狗岩
○少年のひよこ選り買ふ夜店かな
★干瓢干す朝の光を熨し均し
△境内を外れ夜店の灯のなほも

   昭雄
○白々と明けかんぴようを剥く朝
△息を呑む間に崩れたる牡丹かな
○一族の苔の奥津城ほととぎす
○かんぴよう剥く薄紙ほどの影こぼし
△水点して煽る夜店のランプの灯

   登美子
△たばこ屋に見なれぬ娘夜店の灯
○干瓢を干し終へ遅き昼餉かな
△干瓢を干して日射しの白さかな
○干瓢を干すや甘き香匂ひ立つ
 ハッカパイプ吸ひて巡れる夜店かな

   良人
△寄りし子等捌く夜店の茶髪の娘
△川端の並木で終はる夜店の灯
△石段で途切れる夜店坂の町
△軒端への風をとらへて干瓢干し
○干瓢の縒れて縮れて干し上がる

   比呂
△傾ぎ立つ馬頭観音草いきれ
△這ひ出せる子亀買はるる夜店かな
△かんぺうの簾くぐりて来る農夫
△閉院を告げる看板さみだるる
△郭公の声の途切るる霖雨かな

   敬子
△束で売る夜店の岩波文庫かな
 虹立ちてホルンの森にはしやぎ声
△干瓢の踊るテープとなり剥る
△ビーチバレー汗の水着の砂まみれ
 帰国して好み鮮やか更衣

   清子
△巣燕の軒も拝まれ森の宮
△初夏や川風よぎる舵手の声
 夏祭子等の競へる大道芸
 癒す身に小皿に盛りて初かつお
△人去りて菖蒲田の水ひびき合ふ

   鴻
 かんぴようを剥く条件の風通し
△暑気払ひ庭の手入れもそこそこに
△だみ声の売り子夜店の客を呼ぶ
 あじさゐや亡き母親の仏前に
△野に伏して流れる星を数へけり

   一構
△立山に雲ほぐれけり夜光虫
△剣岳肩を怒らせはたた神
 雪渓を行くジーンズの少女かな
△一息をつき雲上の岩清水
 窮しても通ぜぬ年金梅雨寒し

   ミヨ
△よく冷えしワインの試飲甲斐路かな
 干瓢の引き屑にある目色かな
△きぬさやの蔓を遊ばせ朝の風
 明星や半ば眠りし夜店閉づ
 鳩杖や歩を先んずる竹落葉

   憲
 昼行灯の男いきいき夜店かな
 言葉などいらぬ二人や夜店の灯
 白無垢や剥いた干瓢結婚式
 河川敷前夜の小屋は夜店かな
△みそ汁や干瓢を剥く母のゐて