第151回 平成21年5月17日
彩りのあふれて首夏のオードブル
火のにほひ残し胃の腑へ初松魚
垣越える風待ちきれずしやぼん玉
そこばかり瀬音の荒らぎ上り簗
たんぽぽや木の枕木の引込み線
ともこ
△掌の中にかをりの嵩の山椒の芽
★間取り図に書き足すテラス風薫る
・初鰹台車で客の河岸食堂
初夏の靄に包まる山の朝
・立浪草の風にそよぐ波頭
信子
お結びの丸と三角子供の日
・ほのぐれの沖に釣舟首家の浜
△海遠き町の夕市初鰹
△シャリシャリと初夏のフルーツサラダかな
貸農園十坪十坪に豆の花
★飴色に古りし竹垣夏きざす
・初鰹妻の財布の固結び
・更衣ふくらみ寄せてベレー帽
・岩の間を折れ流る水夏きざす
ヤバイとはかつては隠語黴にほふ
昭雄
△野武士めく肩を揺すりて桜守
△乳歯二本抜けたる笑顔夏はじめ
・三陸は天領の海初鰹
初夏や衿のおきなドレス来る
初夏の真昼の川を眺めけり
美代子
・咲き満ちて岩燃え立たすつつじかな
・梅雨近し空を鏡に研ぐ包丁
背になじむ古き木の椅子夏来る
・棗句や飾り釦の塗り剥げて
・栃の花に誘はる虫の空念仏
・一滴の雨に始まる落花かな
・一降りの雨が誘ふ花吹雪
故郷の味の筍荷の中に
・夕暮れとなりゆく花の白さかな
花びらの翼の如し昭和館
比呂
・親方の下ろす高下駄初かつを
・老鶯の普き村に馬生るる
初夏や図鑑にはなき鳥の声
・軒菖蒲珠をしつかと柳の爪
風の語を次々伝へ牡丹園
良人
初なつや僧侶の衿の涼やかに
・店先の幟に大書初鰹
・街路樹の影の短き首夏の午
銚子より届く宅配初鰹
引き抜ける竿の撓わに鰹釣
・洋館に手斧の柱夏はじめ
・風炉手前点で貌描く蕪村の絵
・初産に朝餉の煮物初鰹
母の日や母のピアノを今も弾く
聖五月ドレスが似合ふ隣りの娘
登美子
からまつの芽吹き盛んや富士五合
・祝ひごと決まり田植を急ぎけり
上向きの栃の花咲き雨になり
母の日の花かご分けて水与ふ
母の日や豆大福の鉢合せ
賢
・居酒屋の弾む会話や初鰹
カラフルな初夏の大地はキャンバスか
初夏や解散風が吹き荒れる
アスファルト割りて青葉の命かな
初夏や水車で挽きし粉薫る