第１５６回 平成２１年１１月２２日
騒ぎ立つ鳥のこぼして藪柑子
湖に流るる雲や雁渡し
水細る磧に乾きくづれ簗
藁束ね洗ふ農具や秋の暮
耳借りて眼鏡マスクにイアフォーン
信子
◎ 吹き冷ますミルクの被膜冬はじめ
△ 捨て鐘の音のちりぢりへ雁渡し
・ 近道の細道小径藪柑子
・ 旧道の昏れ初む並木藪柑子
所作動作夫婦折り合ひ文化の日
比呂
◎ 縁無き人住む生家雁わたし
△ 藪柑子縁切寺の深き軒
・ 流さるるばかりの暮しの百合?
・ 初時雨炭濃淡の白描画
・ 人体模型の昭和の顔や雪催
△ 結界に低き木柵やぶかうじ
△ 楼門の鯱の金色雁渡し
・ 掛大根万の隙間に風迷ふ
切り戻す冬ばらの影かたまりぬ
息ひそめ一途に彫りぬ霜の夜
ともこ
△ 雁渡し扉の固き辻社
・ 小春日や尾を打ち鯉の向きかはる
・ 小菊挿す茎の撓みを手に余し
・ 水底に積もりて色の落葉かな
・ 御手洗の水に打たれて藪柑子
芳子
△ 人の輪の大小動き落葉掃き
・ 路地裏に小さき祠藪柑子
・ 風を得てひかりのうねり枯尾花
・ 高稲架を天にあづけて野良仕舞ひ
運試す鳥居の小穴雁渡し
・ 雁渡し窓打つ音の途切れなく
・ 石庭の土塀に色の藪柑子
・ 廃線のレール無き橋雁渡し
・ 陽をの入らぬ鎮守の森や藪柑子
・ 木洩れ日を受けて色濃き藪柑子
昭雄
・ 藪柑子寺の小径の薄明かり
・ 貫入の音生る窯や雁渡し
・ 翳す手に関東平野雁渡し
・ 山寺の木洩れ日遊ぶ山寺藪柑子
雲の浮く朝日岳遥かや藪柑子
鴻
・ 初霜や草の葉黒くいじけゐて
・ さざんかの満開一つ散り初めて
・ 薄暗き林を飾る藪柑子
雁渡し飛行機雲は左折れ
谷川の水に流れる紅葉かな
・ 人に増す絆の深さ雁の棹
・ 藪柑子紅一点となる山野
隊列や孤独を癒す雁渡し
残り日を指折り数へ雁渡し
藪柑子彩り添へる道の駅
敬子
・ 特大の柚子に鬼の名冠せらる
小春日や松の大樹に鳩の胸
里山の小道に出会ふ藪柑子
のびのびと刈田天下に鬼ごっこ
雲流る八溝山系雁渡し