第157回 平成22年01月17日
粗莚展げて松を解きにけり
不揃ひの椀寄せ鏡開きかな
薄氷とともに洗ひて笊の銭
宝尽しの帯に隠して貼る懐炉
紙入の札をまさぐり懐手
ともこ
◎新彫の波のはみ出す年賀状
○薄氷の影より淡く魚の群れ
・俎板始「の」の字輪切りに鳴門巻き
・餌台の雀飛び立ち鏡餅
日脚伸ぶ学生服の案内状
良人
○うすらひに丸く影置く雑木山
○うすらひに風紋残る谷地田かな
・薄氷に光を閉ざす雑木山
お榊や鏡開きのにぎやかに
甲高き鏡開の子の気合
・年棚や薄紙を剥ぎ陶の虎
口まげし火男哀し酉の市
桶の水騒がせほとぶ鏡餅
どんど日におぼる墓石の真闇かな
薄氷や蝶のむくろのかけら見ゆ
昭雄
○暖炉燃ゆ壁に大きなジョンレノン
・薄氷割れば水の香大地の香
・鏡割り禰宜も僧侶も寄る稽古
・鏡開く人美しき袂かな
薄氷踏みたくて路地曲がりけり
聖子
○薄氷の白き野川の分かれ道
・寒夕焼詩を諳んじつ踏むペダル
・息白し白し自転車あと五分
薄氷を母へと赤き手の小さき
七本に七つの形松手入れ
○薄氷や谷戸の祠の微笑仏
・年忘れ僧侶の歌ふ椿姫
やりすごす大晦の看取りかな
鏡開賜る黴ももろともに
埋火に十字の灰の灰ならし
一構
・冬の日の機影をかくす雲疾し
・矍鑠の傘寿の剣士鏡割
・かはたれや木槌で開く鏡餅
・筑波嶺に百光眩し大旦
薄氷や山の機嫌を見て過ごす
鴻
・しんしんと寒さ襲来せる深夜
・ガラス戸の氷りて唐草模様かな
・碧眼の豆三四郎鏡割り
・薄氷や風に任せて寄り離れ
薄氷を素手で割りをる童かな
・商人で徹す父母鏡餅
・鏡開く日や一天の晴れ渡り
・冬うらら向きをてんでに露天風呂
薄氷遠くの空は遠く映し
父の座の父のつぶやき鏡餅
登美子
・裏庭の凍え踏み入る人もなく
・冬空の藍さどこまで誕生す
・絵ガラスの窓の銀行蔵開き
冬の鳥三日通ひてん実をさらふ
深刻な話か薄氷はさみ佇つ
敬子
・薄氷に風鳴つてゐる杉木立
・おでん食ふ毀誉褒貶を聞き流し
・半世紀てふ友どちや女正月
湯の宿の鏡開きの汁粉膳
駐在の自転車を押し福詣
初夢はマスターズてふ鏡抜き
薄氷の流れるまでの誓ひかな
薄氷の流れの先や筑波山
小さきも大を離れず薄氷
買初めの白球冴えて始球式
憲
ひと区切り鏡開の新鮮さ
絆増す鏡開きの家族かな
薄氷を二度と踏むまい危険かな
われ生きる薄氷踏みの続きたり
まねしたい薄氷渡る池の鳥