第158回 平成22年02月20日
瀧凍てゝ水にねむりの刻もどる 重次
春立つや浜へ線路を横切る径
鍬の柄を一本買うて午祭
流氷の軋るや浜の風乱れ
山を焼く棒一本で火を追ひて
啓蟄や煮付けの魚の剥く目玉
比呂
ゆるゆるの形見の指輪雪消月
鳥鳴かぬ朝補陀落も凍てをらん
土塊も目覚めてをりぬ牡丹の芽
篁の雪のほむらに傅ける
粥柱いろ匂はしき輪島塗
ともこ
◎春遅々と砥石の沈む外流し
△白銀の山迫り来て冴え返る
△啓蟄の土を盛り上げ土竜かな
△せせらぎに降りる木の段座禅草
△鉄の扉の城主の墓や牡丹の芽
○雪もよひ厨に湯気のあふれゐて
○麻痺の手にもどりし動き牡丹の芽
○啓蟄の鞭を煽りて草競馬
△啓蟄の馬せめぎ合ふゴール前
△雪解けて雪の話も消えにけり
登美子
○啓蟄や青く灯れる非常口
○陣広げはじめた草に春の雪
○啓蟄や青年すくと席ゆづる
△春の雪掌にわしづかむポップコーン
△啓蟄や山より風のすべり来る
ミヨ
○淡雪や目鼻こそげて笑み仏
○水たたむ確かな手元紙漉女
○仏殿の鐘の余韻や牡丹の芽
△がらんだうの納屋の暗がり地虫出づ
△凍滝に遊ぶ山影雲の影
○お針子の小紋の小袖針供養
△啓蟄や碗に抹茶のうすみどり
△啓蟄や鼓動轟く楠大樹
火を吐きし斧を鎮めて雪解川
新しき軍手一双牡丹の芽
鴻
○風止みて部落総出の畔を焼く
△枯枝とまがひし先の牡丹の芽
遠景のおぼろに見えて竹の秋
猫柳しばし佇む散歩道
地虫出て古きタイヤをよぢのぼる
良人
△啓蟄の空に吸はれし水の音
△やはらかき明かりを宿し牡丹の芽
啓蟄の空に鳶の漂へり
病棟の中庭口に牡丹の芽
花開く時節を包む牡丹の芽
△啓蟄やバツクコートを軽くして
同窓の友逝き二月訃の多し
寡婦の家囲ふ石垣牡丹の芽
園児らのジャンプして割る薄氷
娘等化粧われ睡魔くる暖房車
憲
△咲く色を紅にひそめて牡丹の芽
牡丹の芽紅一点の寺の庭
啓蟄や若者たちの夜明け前
明日に向け啓蟄誘ふ門出かな
殺風景みつけたりやの牡丹の芽