第172回 平成23年04月17日
兼題 伊勢参り 紫木蓮
大笊の種芋の芽の出放題
寸莎落としこねる壁土梅は実に
試し飛ぶかにゆるゆると初燕
大釜に湯の沸く茶店伊勢参
紫木蓮浮き雲ひとつ寄り来れば
信子
◎肩掛けの鞄の小鈴伊勢詣
○思ひ立つ時が吉日伊勢参
・園丁のてんでに寡黙紫木蓮
・もくれんや声の溢るる幼稚園
陸に残る津波の破船春の雪
昭雄
◎お伊勢講日掛け預金の古りし箱
・草刈機畔に寝かせて拭く眼鏡
・大門の乳鋲の錆や紫木蓮
伊勢参り癒える兆しの妻に添ひ
紫木蓮長女の家の丘の上
○何時止むか知れぬ余震や紫木蓮
・紫木蓮なにやら記念の札立ちて
・紫木蓮思ひふくらみ咲く日なり
・かぐはしき風に誘はれ伊勢参り
・木蓮のあやなす揺れのをさまらず
登美子
○姉妹めく女三代伊勢参り
・紫木蓮写し二階の三面鏡
・紫木蓮風穏やかな日の続く
・羽広ろげ空を飛ばんと紫木蓮
おしやべりの止みしつかの間春惜しむ
比呂
○豆の花生活に遠き微積分
・尼寺跡の布目瓦や泥蛙
・伊勢参五十鈴川にも銭投げて
・病みぬくとみせて急逝残る雁
紫木蓮医に脈を盗まるる
○鍬の錆未だ適はぬ伊勢参り
・日光責め果て頂戴人の青き顔
・日光責め白描の龍口を開け
・腰痛によく効く火鍼木の芽風
迯げしなの声飲む津波もどり寒
良人
・やはらかき白き日差しや紫木蓮
・色めける晴れ着をまとひ伊勢参り
・咲き満ちて木蓮空を覆ひけり
・泰然と疾風に向かふ紫木蓮
・清清し木洩れ日を背に伊勢参
郁子
・咲き満ちて桜の吐息重かりき
・紫木蓮揺れて灯しを誘ひけり
・風を踏み登る坂道花吹雪
水色もあたたかき色犬ふぐり
遠き日の五十鈴川かはらず伊勢参
・みちのくの壊れし大地紫木蓮
・紫木蓮余震なかなか治まらず
・己が身と重ねる演歌紫木蓮
紫木蓮残り香淡きエレベーター
頬紅を少し多めに伊勢参り
恵子
・里の茶屋初音に箸を止められて
・堤行く人に重ねて散る桜
・伊勢参りにわか善女となりて発つ
我有りて空を仰いで老桜
重ね塗る若き自画像紫木蓮
健
・木蓮や紫色と白の和し
・神域を行きてははづれ伊勢参り
白色やコントラストの紫木蓮
道すがら目奪われたり紫木蓮
大震災お百度を踏む伊勢参
・玻璃越しに子規の遺影の見る芽吹き
・おのおのが衿を正して伊勢参宮
板塀の漆黒あをき紫木蓮
三椏や鞠に翠の糸刺して
子規庵の玻璃にゆがみてすみれ草
敬子
・交番の屋根をよぎりて初燕
・里桜桟敷に区切り休耕田
・暮れ方の風に咲き初む辛夷かな
白装束のわれもひとりぞ伊勢参り
紫木蓮ケアホームより数え唄