第217回 平成27年2月25日
兼題 春寒 牡丹の芽
瀧凍てゝ水にねむりの刻もどる 重次
独り言つやうに焚く護摩春立つ日
伊勢詣で風の甘さの生姜糖
春寒や熊野牛王の烏文字
公魚を釣るや薄氷掬ひては
神占は実り豊かと御神渡り
比呂
★万屋の下げて売る笊春疾風
△料峭やや深山に鳥の通ひ道
・春寒し仏頂面で立つ秘仏
・結願の賜る証書牡丹の芽
・鰐口の音のくぐもり雪催ひ
昭雄
★野仏の慈悲の頬杖牡丹の芽
・牡丹の芽銘を刻みて刀鍛冶
・牡丹の芽智恵子生家の躙り口
・ポケットに名のみの春を握り締め
・含満ヶ淵おんそはそはと春寒し
△冬空を搦め波打つ荒梵天
・春寒し水屋に昼夜水の音
ドカ雪やペンギン歩きポストまでまで
大入試「残り10分」ですの声
にぐわつの空より天使カーニバル
ミヨ
△駅下りて畷小一里遠桜
・春寒や昼なほ暗き骨董屋
高機の手許しなやか老の春
福寿草苔なす寺のひとところ
魚板打つ真下に照りし牡丹の芽
一構
・色失せし父の遺影や春寒し
・たぎる湯に籠ごと沈めずわい蟹
公園に寒紅梅の花さかり
風花に向かふ唇渇きをり
忘れ物多くなりける春寒し
・顔を打つ風のやはらか春寒し
春寒や朝一番の受け答へ
陽を浴びて固さほどける牡丹の芽
山内の枯色染める牡丹の芽
春寒や風の音来る露天風呂
輝子
・仏前のお茶を取り替へ春寒し
春寒や手擦り足踏みバス待つ子
牡丹の芽晴れの宴の帰り道
春寒し一人の旅の田舎駅
牡丹の芽見上げし天の風掴む
敬子
・春寒や大樹を楯に野菜売り
ジョギングに語り部もをり福寿草
年新たテーブル囲む三世代
人気なき古刹に真っ赤な牡丹の芽
下萌えの土手まで歩む日課かな
・春寒や上手の手から水もるる
春寒や季の移ろひ瑞穂の国
何色と問ひかけたるや牡丹の芽
咲く夢に期待膨らむ牡丹の芽
成長や赤子に似たる牡丹の芽
木瓜
・春雨の音淑やかに包む村
村一つ包みて静か春の雨
寒き風ふと握り締む牡丹の芽
声掛けに振り向きたるる牡丹の芽
春の風心素直に戦ぎけり
鴻
春寒し下着一枚重ね着て
空高く姿は見えず雲雀鳴く
風もなく芝焼く煙遠近に
鶯の姿は見えず藪の中
陽を浴びて日ごと脹らむ牡丹の芽
研修の寮の結露や春寒し
日溜まりに飾れば笑まふ牡丹の芽
行列の先の庭園牡丹の芽
マラソンの緑のジャンパー春寒し
決算期なればノルマや春寒し
巴人
境内に漲る炎牡丹の芽
足うらや御堂の廊下春寒し
漫ろゆく料峭春風はしご酒
春寒しあすなろ一本雑木山