第216回 平成27年1月11日
兼題: 初明り 初音


   利孟
 福笑ひ垂れ目の描かるアイマスク
 お年玉達磨手刷りの点袋
 将官旗掲げるマスト初明り
 松過ぎのようお参りと宮の巫女
 閉ざされし御廟の鉄扉初音かな

   巴人
★二荒や初音打ち出す宮太鼓
・初のあかり男女の峰の筑波山
・老松の裾の松子や初あかり
 日章旗初鳩の群天降りくる
 くくり鳴く千木の初鳩初御空

   聖子
△初明かり夢のそよぎの竹林
△ありがたきふるさとの山初明り
・初明り青をふかめて松の色
・初富士を遙かに風の吹きすさぶ
・安達太良山の智恵子の空や初明り

   比呂
△初明り兆して星埜消え残る
△一の橋二の橋渡り初音かな
・深雪かな心折れるといふことも
・七日粥唐子模様の飯茶碗
 木枯や自愛の布を首に巻き

   ミヨ
△手斧始め斫りてこつぱ散華かな
・太注連の太き縄目の青光り
・風化仏尋めゆく谷戸の初音かな
・法螺の音の響く大空初日の出
・初明り難儀蹴散らす仁王尊

   良人
△初明り杉山やはらかに燃えて
・初明り浴びて那須岳映え渡る
・初明りビル高階の窓染めて
 漆黒の闇の棚田に初明り
 筑波嶺の姿厳か初明かり

   鴻
・早目覚めガラス戸温め初明り
・音の出るまでの苦心や初音笛
・きしませて閉めたる板戸すき間風
・もう一枚重ね着寒波襲来す
 今年こそ粹な新年息高し

   信子
・今朝もまた母の早起き初明り
・寒晴れや吸ひては吐いて深呼吸
・厨房に御座す大黒初明り
・木の一つひとつに影や冬日和
 鶯の法と法華経の間合ひかな

   昭雄
・初音訪ふ藪のにほひのかうばしく
・初明り故郷の山の端煌めかせ
・胎の子が蹴つたとだけの初メール
 雲巌寺参道に恋ふ初音かな
 初音かな徳次郎城址のけもの径

   一構
・新築の格子の引き戸初明り
・男体山頂よりの初明り
 童等の瞳かがやく初明り
 初明り犬の首より見え初める
 初明りあなたまかせを卒業す

   敬子
・初薬師坂ゆるゆると車椅子
・蔵の町行く人力車冬うらら
 鷦鷯宿のワルツに憩ひけり
 初明り愛燦燦の歌ひびく
 初音きく夫在りし日のログハウス

   健
・メモをとる手の休みなく初音かな
 初明かりまどにこぼれる宵の家
 蛍光灯起床の紐や初明り
 口ずさむ身振り手振りの初音かな
 計画の大筋浮かぶ初明かり

   木瓜
・老いてなほ気の燃え滾る初日の出
 初明り人それぞれに千の明
 手のひらに小さく強く初明り
 細き穴狙ひ突き抜く初音かな
 障子戸を零れ流るる初音かな