第219回 平成27年4月19日
兼題:春ショール 花
春ショールまとひ天女となる心地
軒下に吊す薬草燕来る
竹の秋水琴窟を包む闇
散り残る花を急かせて谷の風
風強くなれば丸めて春ショール
比呂
★あしかびや泥に半身の捨て小舟
★来迎の雲の七色春の虹
・青空に雲の蕩めく日永かな
・括れ無きマネキンの脛春ショール
閑職てふ職を賜はり花の下
昭雄
★花の馬車馭者は喇叭を吹き続け
★樟脳の香りをつれて春ショール
・堰二つ落ちて淀みの花筏
・黙礼を交はして過ぎる春ショール
咲き継ぐも散りつぐも花さくらかな
★春雷の空にのつぽの廃墟ビル
・装ひの色に加へて春ショール
・日めくりのみつをの言葉桜の夜
月食の月雲間よりさくらかな
白髪も背丈も個性春ショール
ミヨ
・金次郎に花の栞を運ぶ風
・さくら散る小窓の開く質屋蔵
・座敷幟隠れ平家の深き軒
日光線千年杉の花粉被ふ
窓際の茶亭の卓や春ショール
良人
・雪嶺を望む堤に桜満
・雨風の夜半の高まり桜どき
麓より数増し色を増す桜
光とぶ城趾をめぐり桜満つ
桜背に露天に釘付け子連客
・雑草に埋め尽くされし畑打つ
・うたた寝を俄に起こす春の雷
新品の少女の派手な春ショール
春ショールウィンド前の娘たち
草原のタンポポの群れ咲き誇る
健
・空模様出掛けに迷ひ春ショール
・野舞台に桜吹雪の舞ひしきる
軽やかにまとふ婦人の春ショール
見下ろせば水面を飾る花筏
二重奏人と野山に桜咲く
敬子
・病窓に仄かな香りシクラメン
靡かせてスタイリストの春ショール
車椅子垂れ桜に手を合はす
四月馬鹿箪笥の服を重ね着し
桃の花肩にやさしく看とりの手
・散り初めし花の並木や野辺送り
板前の包丁一本木の芽和え
愚痴を聞く雨の音聞く八重桜
花散らす傘とカメラと三脚と
明日からは前線北上冬帽子
輝子
・靖国のよはひ傘寿の花の道
白き嶺里の桜に光りたる
ポーズとる鏡に揺れる春ショール
流れては寄する花びら川まかせ
初桜常の散歩の軽き足
巴人
・天地の合間に桜ふぶきかな
身にまとふ黒きショールや春彼岸
棚引ける川津桜や亀山城
墓参りどの径往くも芝ざくら
望月や酒杯交す花のもと
遅桜時の流れを噛みしめて
時来たるいざ潔く散る桜
我がものでありでなきよな春の夢
ひるがえす若さふたたび春ショール
遅桜開かん次の人生路