第220回 平成27年5月24日
兼題 五月闇 粽
入れ込みの肘寄せ蕎麦と冷し酒
盃洗のビールグラスは音立てて
沖膾刃先で味噌を掬ひ混ぜ
笹粽床に竜馬の刀傷
五月闇うねりて長きみだれ髪
ミヨ
★酸葉食む畦に区切られ古墳群
二世帯の暮らしそれぞれ粽結ふ
石仏の膝に蕊置く五月闇
火渡りや秘めたる護摩木夏書とす
経の声入るる火渡り夏始め
昭雄
△駐在の赤灯滲む五月闇
△五月闇一灯点る伎芸天
△小面の薄き唇五月闇
△まづ粽解いておろすランドセル
粽結ふ昭和の母の気骨かな
△降り出してすぐ大粒に走り梅雨
△田の水に映る里山初夏の風
△五月闇水は暗渠に流れ込む
△大木の揺るる林や五月闇
二畝を鋤いて一息粽解く
比呂
△花筵羽裏に写楽の大首絵
△下闇や小町の墓は苔の下
△抜きたての青菜の匂ひ薄暑光
寄進瓦に記す家族名笹粽
次々と立ち読み続け桜蕊
良人
△五月闇レールの影の消えた駅
△五月闇衣新たに六地蔵
店棚にみどりを競ふ笹ちまき
山峡の天地閉ざす五月闇
遠雷の光まぶしき五月闇
△五月闇水車の紡ぐ水の音
△蔵町の隣り合ふ蔵梅雨の闇
穏やかな日和三日や笹粽
郭公の鳴く日日となりにけり
木綿糸針に通して麦の秋
輝子
△五月闇社の杜に棲む天狗
粽食べ従兄弟同士の笑ひ声
天と地の境さ迷ふ五月闇
五月闇時の流れに昼夜無し
蒸したての粽頬張る手は赤く
敬子
△教会の窓辺明るき花水木
芝桜白の縁どり小川めく
芝桜奇遇の友と手をとりて
同窓の友との旅や五月闇
粽食べ料理教師の母偲ぶ
△かさこそと樟の葉音や五月闇
粳粉が鼻筋通す粽結ひ
とぶ光淋しく遊ぶ五月闇
母と子の粽結ふなり膝頭
蔵の町巴波流るる五月闇
健
手探りや道なき道の五月闇
照らされし車のライト五月闇
今は昔あの味忘れざる粽
幼少の思ひ出詰まる粽かな
闇づくし心の闇に五月闇
鴻
素足にて砂場に遊ぶ幼児達
五月闇ライター点けて池を見る
久しぶり粽作って家族会
早乙女の姿見えたり千枚田
木瓜
向かひ合ひ粽頬張る子の和み
粽解く浮かぶ姿は祖母の結い
端居して今断崖の際に立つ
五月闇銀河鉄道突き抜けて
ハラハラと見つめるグラフ五月闇